PE投資が価値創出を実現する新たな領域

 現在のPE投資のアプローチでは、ポートフォリオ内の事業群を、独立した個別の投資先の集合として扱い、それぞれの単体での業績を経時的にどう改善できるかに重点を置く。

 これは当然ながらリスク分散のためでもあるが、PE投資家が価値を垂直的に創出する方法だ。上部にいるのはPEの所有者で、投資先事業(中間に位置する)の戦略、オペレーション、経営陣などの変更を通じて、業績の改善を牽引する。下部では、さらなる価値を引き出すために、追加で買収された事業が既存の投資先事業に吸収される。

 一方、筆者らが考える価値創出の新たな領域は、PEのポートフォリオをビジネスエコシステムとして形成し、管理するところにある。ほとんど活用されていないこのアプローチでは、PEファームは複数の投資先企業間の関係性から成るネットワークを取りまとめる。以前は無関係だった製品・サービス同士を異業種横断的につなぎ、企業間で互いに新たな価値を引き出せるよう後押しするのだ。

 基本的な例として、2つの事業間で共通するサービスの調達(従業員の健康保険など)を統合し、コストを減らすなどでもよい。ポートフォリオをこのように活用することで生じる増分価値は、垂直的な価値を非常にうまく補完する。企業間の「水平的」なつながりこそ、ポートフォリオの価値を高めるための、より多くの新しい選択肢をPEファームにもたらすのだ。

 この価値の主な源泉は、収益強化、コスト効率、企業価値の評価向上、一定のダウンサイド・プロテクション(資産価値の下振れ抑制)などである。調達という基本分野での例として、ある大規模PEファンドはポートフォリオ内での調整を通じて、5年間の累積で5億5000万ドルを節約した。

 別のPEファームは衰退が顕著なセクターにおいて、3年半で2.3倍の投資リターンを生み出したが、その大きな要因となったのは、相互に作用し合う投資先事業間の関係性から生まれた収益だ。洗練されたポートフォリオ横断的な調整により営業利益が15%以上向上しうることを、筆者らは確認している。

 このような価値創造システムは、特にPE投資独特の「売るために買う」戦略――事業を買収し、一定の年数内で経営その他の実質的な改善を後押しした後で、売却するという手法――において導入される。その際、複数の投資先事業が互いに協調関係を築いても、それぞれの経営は自律性を保たなくてはならない。これは、ポートフォリオのリスクを分散させ、PEの所有者がいつでも事業を売却できるよう柔軟性を持っておくためだ。

 要するに、こうしたビジネスエコシステムの形成は、一方に価値、もう一方にリスクと柔軟性を置いて、バランスを取る行為である。

 PEファンドは、投資先事業を互いにどう結びつけるかを事前に計画しないまま、買収した後で日和見的に、エコシステム手法の基本を導入することもあるかもしれない。しかし、価値創出の最大の機会は、買収の前に事業間のつながりが考慮されている場合に生じる。ファンドがエコシステムの構成要素を慎重に選択・調整し、全体のパフォーマンスを高めることができるからだ。

 このアプローチでは、PE投資家は、保有する事業間の潜在的なつながりについて最初にロードマップを描き、それを基に投資先候補を評価する。したがって新たな審査プロセスでは、買収ターゲットの単体での潜在力だけでなく、新しいつながりを形成する可能性も考慮される。

 ファンドが意欲的に目指すべきビジョンは、個々の買収を通じて好ましいビジネスエコシステムを築き、リスクや柔軟性を犠牲にせず、価値を継続的に高めていくことである。