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組織やビジネスモデルの変革には、時間をかけてじっくり取り組むことが常識とされていた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で状況は一変し、抜本的な変革を素早く成し遂げることが必須になった。そして大規模で永続的な変革を迅速に実現するには、小規模で秩序立った変革を積み重ねることが最善の方法である。本稿では、筆者らが「マイクロチェンジ・マネジメント」と呼ぶアプローチを成功に導くための3つの手法を紹介する。


 これまでのビジネス・トランスフォーメーションと言えば、大がかりで長期間にわたる取り組みを見なされてきた。2000年代終盤の大不況以降は、以前と比べれば、テーマを絞って小規模な変革を短期間で実行することを目指すケースが増えたが、変革のマネジメントは所定の工程に沿って順次進められていく場合がほとんどだった。

 転機が訪れたのは、2020年春のことだった。新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中の企業が現実を直視せざるをえなくなり、素早く変革を成し遂げなくてはならなくなったのだ。

 筆者らはインフォシスでの複数年にわたる変革の取り組みでそれを経験し、コロナ禍の中で再び同様の経験をした。そうした直接の経験に加えて、自社の経験を他社と比較する目的で、世界の1000人を超す企業リーダーにアンケート調査を行い、世界のベストカンパニーが社員を新しい環境になじませるために、どのような取り組みを行っているのかを調べてみた。

 この調査から見えてきたのは、小規模で秩序立った変革を重ねることこそ、大規模で永続的な変化を実現するうえで最善の方法だということだった。小規模な変化を長期間にわたり継続すれば、その効果が増幅し、より大規模な変革が実現する。

 筆者らは、このようなアプローチを「マイクロチェンジ・マネジメント」と称している。「極小こそ、新しい極大である」というキャッチフレーズもある。このアプローチは、大規模で複雑な社会問題の解決を目指す団体ソシエタル・プラットフォームのプラモド・バルマとサンジェイ・プロヒトが開発した「ラージスケール・アドプション」という枠組みを土台にしている。

 マイクロチェンジ・マネジメントは、インフォシスを3年間でデジタルネイティブ企業に変貌させた「ライブ・エンタープライズ」という取り組みの重要な要素だった。具体的には、新入社員のオンボーディングをはじめ、社員が行う活動とビジネスのプロセスを再検討し、6週間おきに新しいものを少しずつ導入する仕組み(「デジタル・ランウェイ」と呼んでいる)を確立した。

 これにより、インフォシスはコロナ禍の下でもレジリエンス(再起力)を高めることができた。社員の99%がシームレスにリモートワークに移行することができ、従業員満足度が飛躍的に高まり、顧客価値のスコアは過去最高に達したのである。

 マイクロチェンジ・マネジメントの方法論は、テンプレートやコミュニケーションではなく、人間のモチベーションと行動に関する理論を土台にしている。

 従来は、コミュニケーションが頻繁に行われず、人間味に欠けていて、個別の状況を考慮していない場合が多かった。それに対し、日ごとに短時間のスタンドアップ・ミーティングを実施して進捗状況を確認すれば、変化し続けるニーズとのずれをなくすことができる。進捗状況を把握するためのベンチマークも小規模なもので済む。

 マイクロチェンジをいくつも重ねることにより、大きな変化が生まれて、その累積の効果を通じて非直線的な進歩が実現する。その結果として、その会社での変革への取り組み全般が実を結ぶ可能性も高まる。

 このような習慣を定着させることは不可欠だが、それはしばしば容易でない。しかし、筆者らの経験と調査により、マイクロチェンジで変革を成功させるために有効な3つの手法が見えてきた。以下では、それを紹介したい。