HBR Staff

2020年夏、米国疾病対策センター(CDC)が驚愕のデータを発表した。新型コロナウイルスの感染予防策として、米国人の4%が漂白剤を飲んだり、うがいに使ったりしたというのだ。米国全体に換算すると、実に1200万人が飲んだことになる。しかし、この結果は真実なのだろうか。第2の調査が実施されたところ、そのカラクリが明らかになった。


 2020年初夏に米国疾病対策センター(CDC)は、新型コロナウイルスへの感染予防策として米国内で行われている危険な行為について、報告書を発表した。

 その内容によれば、調査に回答した502人のうち4%は、過去1カ月の間に薄めた漂白剤を飲んだ、またはうがいに使ったと答え、石鹸水についても4%、家庭用消毒剤についても4%が同じ行為をしたと答えたという。

 この報告書は瞬く間に、警告を告げる多数の見出しを誘発した(たとえばロイターは「漂白剤でうがい? 米国民はコロナ予防に消毒剤を誤用」という見出しで報じた)。

 メディアのこうした反応は当然ともいえる。4%はさほど多いとは思えないかもしれないが、もしこの調査サンプルが米国人口を代表しているのであれば、およそ1200万人の米国民がこのような危険行為をしていたことになる。たしかに憂慮すべき数字だ。

 しかしながら、この結論には疑問の余地があるかもしれない。

 第1に、自主的に参加した500人程度の参加者に対するアンケート調査は、必ずしも米国の人口を代表するものではないという言及がCDCの報告書内にはある(生じうる差異に多少なりとも対処するために、国内人口統計における年齢、性別、人種に合わせて回答を重み付けしてはいるが、それでも代表性の判断は難しいと記されている)。

 問題は、サンプルの限界だけではない。CDCの調査結果を再現するために、データの精度を管理する措置をいくつか加えて実施された第2の調査(論文は現在査読中)では、データ自体にいくつかの深刻な欠陥がある可能性が示されている。

 具体的には、オンラインの調査プラットフォームのクラウドリサーチで行われた新たな調査では、データの精度を脅かしうる2つの大きな問題に対処することを目指した。不注意(回答者が軽率または集中していない)と、悪意(回答者が故意に嘘をついたり、研究者を欺いたりする)である。

 中毒性の高い違法薬物の使用など、比較的稀な行動について研究する心理学者の間では、これらの問題は昔から知られている。一例として1973年に行われた違法薬物の使用に関する研究では、薬物一覧の中に嘘の薬物名を混ぜて参加者に使用経験を尋ねたところ、回答者の4%は実在しないその薬物を使ったと答えた。データは完全には信頼できない可能性が高いことが示されたわけだ。

 ここでの数字もまた4%であることに、お気づきの人もいるかもしれない。実際、これは偶然ではない可能性がある。

 高名な精神科医でブロガーのスコット・シスキンドは2013年、広く報じられたパブリック・ポリシー・ポーリングの報告書に言及する中で、これをトカゲ人間の定数(Lizardman's Constant)と名付けている。

 その報告によれば、人間に姿を変えたトカゲ型宇宙人たちが米国を支配しているという説を信じると答えた人は、回答者の4%を占めたという。この世論調査結果はメディアの注目を浴び、「陰謀論が大流行:トカゲ星人が国を支配していると信じる米国民は、なぜ1200万人もいるのか」といった類の見出しが躍った。

 しかし、シスキンドやその他の主張によれば、4%という数字は、このような珍妙な陰謀論が本当に信じられているという事実よりも、回答者の不注意や悪意を反映している可能性のほうがはるかに高いという。

 トカゲ人間に関するアンケート調査のように、CDCの報告書も多くの注目を浴びた。そしてトカゲ人間の場合と同様、これらの回答には正当性があるかもしれないが、単なる欠陥データにすぎない可能性もある。