CASE2 NTTデータ:個々ではなくチームでタスクにあたる

 次に、NTTデータ九州の事例をご紹介しよう。
(なお本事例は、TOCPA(Theory of Constraints Practitioners Alliance)にて発表が行われた)

 同社は、複数の部門で「仕事に人を振る」方法を適用しており、一つは、自社開発したパッケージ製品をクライアント向けにカスタマイズして提供する部門、他にはNTTデータ本社と一体になって、開発と維持を行っている部門である。

 各部門は、1チーム5~20人、4チーム程度で編成され、複数のプロジェクトを動かしていた。異なるサービスを提供する部門ではあるが、共通する問題を抱えていた。

 その問題を理解するために、まずどのようにプロジェクトが運営されていたかを説明する。従来は、プロジェクト全体のスケジュールを決め、各工程のタスクを個人に割り振り、別のプロジェクトと重複しないようマネジメントしていた。いわゆる「人に仕事を振る」やり方だ。

 忙しさの原因分析を進めると、エキスパートと呼ばれるリーダークラスのマルチタスクが原因だった。突発的な保守作業や営業支援、タスク実行中の課題が発生すると、リーダークラスが対応にあたる。すると、他のメンバーには「待ち時間」が発生する。

 待ち時間とは、仕事をしない時間ではない。たとえば、リーダーの確認が必要なため、次の段階に進めずに作業が滞るような状態を指す。その仕事を進められないために、メンバーは新しいタスクを始めてしまう。結果、本来進めなければならない業務が後回しになり、優先度の低い業務が進むことになる。メンバーが同時に動かす仕事の量が増えると、それに伴う対応がさらにリーダークラスの負担となり、リーダーのマルチタスクに拍車がかかる悪循環に陥っていた。

 そこで、人に仕事を振るのではなく、仕事に人を振るという原則を導入した。具体的には、プロジェクト遂行にかかるタスクをいくつかにグルーピングして、複数人のメンバーで同時にひとつひとつのタスクに取り組んでもらうようにした。たとえば、1人で12日かかるタスクは12人日の作業量だ。そこでこのタスクを3人で行うと4日で済む計算になる。このように考えて、タスク期間を最大限短くなるよう、複数のメンバーをチームとして各タスクに割り当てた。同時に、突発作業に対応するメンバーはその都度、確保した。これには精鋭を集めるようにした。

 下図はこの変化のイメージだ。上の「Before」は、それまでの方法で、人に仕事を振る状況を示す。個々人がタスクを抱えているため、隠れた待ち時間(青と緑の網かけ部分)が多く発生している。一方、下の「After」ではタスクごとに人を振り分けており、タスクの塊を複数のメンバーで次々とこなす様子がわかる。現場の生産性が上がることに加え、同時並行的に進むタスクが減るため、リーダーのその時々で管理しなければならないプロジェクトやタスク数が減り、マルチタスクが減る。かつリーダーが主体的に課題にあたるようになった。

「仕事に人を振る」状態へ移行する際にポイントになるのが、「After」のように意図的に空き時間を設け、この枠で予定外の仕事を処理することだ。予定外の仕事が発生することで起こる「変動」を吸収することが、「仕事に人を振る」マネジメントの要である。予定が詰め込まれていると、変動に対応できずチームの一部が本来の業務から離れて対応にあたるなど、「人に仕事を振る状態」へと戻ってしまう。一見無駄に思える空き時間だが、これがあることで待ち時間を削減できれば、それだけで生産性は飛躍的に高まるのである。

 また、タスクと人の振り分けはチームリーダーが行っており、チームにスキルの高い人と低い人を混在させることがポイントだ。スキルの高い人には仕事が集まりやすく、そのリソースを調整することで忙しさを緩和し、スキルの低い人が原因で作業が停滞しないようにした。

 結果、プロジェクトのリードタイムは19%短縮し、突発作業のレスポンスタイムは62%短縮した。部門としてのパフォーマンスが向上し、プロジェクトの完了件数が13%増加したにも関わらず、総稼働時間が14%削減した。生産性は、31%増加した。