3. 従業員の経験を理解する

 多くの新任リーダーがつまずくのは、前任者の影響を完全に理解せずに自分は是正する役割だと考えたり、未来を築くことにチームを関与させなかったりする場合だ。

 悪いリーダーの後を継いだり、退任する経営幹部と異なる視点を持っていたりするだけで、よいリーダーになれるわけではない。結局のところ、それまでとは異なる、よりインクルーシブ(包摂的)なリーダーシップを発揮することで、よいリーダーになれるのだ。

 前任者の好ましくない影響を感じている人々の話を聞き、その情報を自分のビジョンに活かそう。社内の個人やグループに率直に尋ねることだ。

「いま、私に手伝えることは何ですか」「今後に向けて、あなたが一番望むこと、必要としていることは何ですか」「私に何を望んでいますか」「私にしてほしくないことは何ですか」。こうした質問は、悪いリーダーはしないが、よいリーダーは必ずする。

 前述した多国籍企業のCEO交代のケースでは、新任CEOは新しい計画や戦略を発表する前に、インタビューを実施した。1カ月をかけて組織のあらゆるレベルの従業員と対面で話をし、会社が進化するために何が必要かを見極めた。彼が発表した戦略プランが世界中で熱狂的に受け入れられたのは、今後のビジョンに「自分の声」が反映されているとすべての従業員が感じたからだ。

 人は前に進むようにできていて、自分が本当に理解されたと感じると、みずからの意志で前に進むものだ。これは急いでできることではないが、どのようなことが「実現可能」かというビジョンを示せば、ほとんどの人々は進んで過去を捨て去るだろう。前に進むことを強制することはできないが、人々の声に耳を傾け、彼らが苦労して得た教訓を心に留めれば、状況は変わると彼らに示すことができる。

 前任リーダーの行動と目的のギャップを認識し、自分自身のビジョンを再確認し、あなたが率いる人々が何を必要としているかに耳を傾けることで、悪いリーダーの後を継ぐだけでなく、はるかに有能なリーダーになることができる。

 引き継ぐのがCEOでも社長でも、これらを実践することにコミットするリーダーは、自分が率いる人々のエネルギーと知恵を解き放つことができる。それによって人々は、過去とは異なる、誰にとっても意味のある未来を創造することができるのだ。


HBR.org原文:What Good Leaders Do When Replacing Bad Leaders, April 16, 2021.