2. 寛容になる余地をつくり、将来のビジョンを実現する

 悪いリーダーの行動の大半は、善意に根ざしている部分がある。しかし、善意であっても、意図しない結果になったり、悪ければ付随的な損害を生んだりすることが少なくない。

 前任リーダーの目的と結果のギャップを認めるには、「前任の経営幹部が会社に大きな夢を抱いていたことは理解しているが、その方法(アプローチ、スタイル)がうまくいかなかった」と言えばよい。

 私たちは概して、自分自身のことは目的で判断し、他者のことは行動で評価する。このことを人々に再認識させることは、前任リーダーを免責することにはならないが、その人物に人間味を与え、寛容になる余地をつくる。「過ちは人の常、許すは神の業」ということわざの通りだ。

 リーダーの交代においては、寛容さが新しいビジョンと方向性のための余地をつくり、人々が過去を捨て去り、ともに未来に向かって進むことを可能にする。恨みがあるとそれ自体に引っ張られ、過去のパターンを繰り返すことが少なくない。寛容さは逆に、新しい可能性を生み出す余地をつくる。

 筆者は、ダイナミックだが物議を醸したIT企業の創業者から新しいCEOへの引き継ぎを支援したことがある。寛容になるための余地をつくるために、新任CEOはシニアチームのミーティングで次の3つの質問に焦点を当てた。

(1)これまでの仕事の進め方や運営方法のうち、維持したいものは何か。
(2)手放したいものは何か。
(3)新たに築きたいものは何か。

 チームは、現在の手法の多くが効果的で、それらの方針は前任リーダーによって実現可能になったことに気がついた。その一方で、手放すべきものもいくつかあった。

 こうした公平な視点を持つことで、前任者に対する感謝と寛容さを持ちつつ、今後の取り組みを健全な進化と位置付けることができた。よい面も悪い面も、前任リーダーや過去の活動を否定はしなかった。状況は変化するものであり、リーダーには進化と適応が求められるのだ。