以上の3社や、筆者らが調べたそのほかの企業の事例を通じて、リーダーが自社の未来を損なわないために実行すべきことが、いくつか見えてきた。

 ●世界で自社が果たすべき役割を考え直す

 自社がすでに行っていることをデジタル化するだけでは、十分でない。デジタル時代に成功する企業は、顧客(と顧客の顧客)に画期的な価値を提供することに自社の存在意義を見出そうとする。

 そのような企業は、ほかの会社がやっていることを模倣するためではなく、自社のミッションを推し進めるために、新しいテクノロジーを活用する。他社との差別化につながるような能力に投資して、自社のパーパスを追求するのだ。この過程では、古いビジネスモデル、旧来の資産、それまでの価値創造に関する考え方を放棄しなくてはならない場合も多い。

 ●エコシステムを通じて価値を創造する

 すべてを自社だけでやろうとすべきではない。時代遅れの存在になりたくなければ、エコシステムの一員として、ほかの企業と協働すべきだ。

 デジタル時代に成功する企業は、その点をよく心得ている。それを通じて、顧客が必要とする野心的な価値提案を行い、素早くイノベーションを成し遂げて、高度な能力を築くことが可能になるのだ。

 これを実践するためには、リーダーが価値創出についての発想を大きく転換させ、自社が本当に所有すべきものを根本から考え直し、ライバルとの協働に乗り出し、これまでの収益源を手放さなくてはならない。そうすることではじめて、顧客の極めて重要なニーズに応えることができる。

 ●自社の組織のあり方を見直す

 古い組織モデルのままで人々に新しい行動を求めるのではなく、新しい価値創造のあり方を可能にするような組織に転換すべきだ。

 デジタル時代に勝者となる企業は、古い権力構造を打ち壊し、協働を強化することによって新しいアイデアや能力を拡張させていく。そのような企業は、結果志向のチームを設けて部署の垣根を越えて活動させ、エコシステム内のパートナーと手を携えて行動させる。そうやってライバルと差別化できるような能力を高めなければ、勝者にはなれない。

 リーダーは、いくつかの重要な問いと向き合わなくてはならない。「現状をどれくらい変える必要があるのか」「どれくらい速いペースで既存のビジネスの土台が覆されていくのか」「新しい戦略は現状の能力とどのくらい乖離しているのか」「変革のプロセスを適切にマネジメントするためには、どうすればよいのか」といった問いである。

 しかし、これらの問題を口実にして、古いビジネスモデルにしがみつくべきではない。ビジネスを根本から変革しない限り、デジタル化だけ推し進めてもどこにも到達しない。

「マネジメントとは、物事を正しく行うこと。リーダーシップとは、正しいことを行うこと」であると、ピーター・ドラッカーは述べている。企業の幹部チームはいま、行動を起こし、抜本的な自己変革を行い、デジタル時代のリーダーになるべきだ。


HBR.org原文:Digitizing Isn't the Same as Digital Transformation, March 26, 2021.