名和 パーパスの難しさの1つに、どう計測し、「見える化」するかという問題があります。

井上 我々は日本においてはサステナビリティレポート、グローバルでは統合報告書を作成し、事業変革に関する進捗の確認と報告を行っているほか、いくつかの項目については、タイムラインを引いて目標を定め、それに対してどこまで達成しているかを細かく数値化して、定期的に発表しています。

 それがパーパスの計測といえるかどうかはわかりませんが、目標に対する道筋については細かく数値化できていると思いますので、一般の方がご覧になれば、フィリップ モリスが何を目指していて、それに向けて現在どこまで実現できているのかをご理解いただけると思います。

宮尾 ブランド指標やビジネスプロセスの指標、働きがいランキングなど、非財務の領域で、さまざまな指標があります。これらの指標を意識して、よりよいポジションに到達することが、結果としてパーパスの実現につながるのであれば、それに挑戦すればいいと思います。

 もう1つ、パーパスの実現といったときに、そもそも何を測るべきか、どう測ったらいいのかがわからない、あるいは現場にはデータがないという声も聞かれますが、昨今はデジタルが大きな力を発揮して、見えないものを可視化することが簡単にできますから、デジタルの活用も検討すべきでしょうね。

成功の方程式は、3つの「P」の掛け合わせ

名和 パーパスを絵に描いた餅に終わらせることなく、しっかりと実現していくうえで、最大の壁は何だと思いますか。

井上 煙のない社会の実現はフィリップ モリスだけでは難しく、広く多くのステークホルダーの方々の協力を得る必要があり、そこが最大の壁です。たばこに反対意見をお持ちの方も含めて、多方面のステークホルダーを巻き込んでいくことが大事だと思っています。

宮尾 ひと言で言うと、最大の壁は実現手段のイメージがつかめないことだと思います。解決すべき課題が明確になり、ひとたびパーパスが再定義されたら、それに向かって取り組まなければなりません。

 このときに解決手段となるのが、広義のテクノロジー、デジタルであり、それらに対するリテラシーや、受け入れる土壌、マインドセットがないとすれば、まずそこを整えていかないといけません。テクノロジーやデジタルは手段に過ぎませんが、それを使って効果があるのであれば、積極的な活用を考えたほうがいいでしょう。

名和 レディネス(準備性)は確かに大事ですね。慣れた仕事をするのは楽ですが、変革は気が重いものです。多くの人々が変革に取り組むには2つのレバーがあると私は思っていて、1つは危機感、もう1つは使命感です。

 この使命感の「使」を私は「志」と置き換えて「志命感」と言っています。危機感だけでは不十分で、正しいポジティブな変化を自ら起こそうという気になること、志をみんなが自分事化することができれば、パーパスの壁を乗り越えていけるのではないでしょうか。

井上 志命感をパッション(情熱)と言い換えることもできます。誰かに言われたからとか、自分がたまたまそういう任務を与えられたからではなく、1人の人間として腹落ちしてパーパスに共感、共鳴し、パッションを持ってポジティブな変化に取り組む。それが壁を乗り越えるには非常に重要だと思います。

宮尾 パッションを持って変革を実行していくには、プロセスが大きな鍵になります。ここでいうプロセスは日々の仕事のプロセスに限らず、たとえばスマートシティを開発していく中でさまざまなエコシステムを形成していくステップであったり、戦略立案のプロセスであったり、結果を出すためのすべてのプロセスです。

 パッションをしっかりと持ちつつ、実行のプロセスにおいて誰を巻き込むのか、どんなメソドロジー(方法論)やツールを活用するのか。そこを視野に入れておかないと、実行段階において変革が停滞してしまいます。

名和 (京セラグループ創業者の)稲盛和夫さんは、「成功の方程式=考え方×能力×熱意」と言っています。本日の議論に即して解釈すれば、パーパスは「考え方」、プロセスは(組織)能力、そしてパッションはまさに「熱意」です。3つのPを掛け合わせることが、変革を成功させると言えそうですね。

 ありがとうございました。

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