なぜダイバーシティより先にインクルージョンが必要なのか

名和 フィリップ モリスやアクセンチュアの従業員にとって、パーパスはどういう意味があるのでしょうか。パーパスを持つ、持たないで、どれだけエンゲージメントが変わると思いますか。

井上 2014年に加熱式たばこを名古屋限定で発売して、2016年以降、全国展開しました。その年に、「煙のない社会」を目指すというビジョンを掲げ、サステナビリティ戦略をグローバルに始動していく中で、従業員の意識は大きく変わっていきました。

 世の中でたばこがどう見られているかは、外部の方と話す機会が多い現場担当者が一番肌で感じているわけです。その中で、会社が事業変革を起こしていくんだ、明確なビジョンを持ってぶれずに邁進していくんだ、そして一人ひとりがビジョン実現に向けて貢献できるんだという実感は大きかったようです。

宮尾 アクセンチュアはパーパスを再定義し、「テクノロジーと人間の創意工夫で、まだ見ぬ未来を実現する」としました。経済的な価値はもちろんのこと、人材育成、サステナビリティやインクルージョン&ダイバーシティを含む「360°Value」の価値を創出しようとしています。

名和 「360°Value」については、昨年耳にして、とてもすばらしいと思いました。アクセンチュア・グローバルの女性CEO、ジュリー・スウィートさんは、インクルージョン&ダイバーシティをみずから体現されています。

 実は最初、インクルージョン&ダイバーシティと聞いて、順番が逆ではないかと思いました。普通はダイバーシティ&インクルージョンで、多様性があるから、包摂性が求められると考えます。特に日本はダイバーシティが足りないから、そう言いがちですが、ダイバーシティを大事にするためにも、インクルージョンが先に必要なのだという考え方ですね。

宮尾 私自身、アクセンチュアに中途入社し、長らく勤める中で、ダイバーシティの前にインクルージョンがいかに大事かを実感しています。我々のサービスラインには、コンサルティング、テクノロジー、オペレーション、インタラクティブなどがあり、多様な国籍、バックグラウンドを持つメンバーが一緒に働いています。

 コロナ禍においても、そうしたメンバーがストレスを感じることなく、普通に仕事ができているということは、インクルージョン&ダイバーシティの恩恵に他なりません。

井上 フィリップ モリスでも、当初はダイバーシティ&インクルージョンと言っていましたが、ある時からインクルージョン&ダイバーシティに変えました。フィリップ モリスは真の多国籍企業で、日本にいるメンバーの国籍もさまざまです。

 いろいろな国・地域で実績を積んだ人材が、日本のマネジメントチームのメンバーになっています。文化的背景や価値観は当然、異なりますが、インクルージョン&ダイバーシティによって、フィリップ モリスのDNAがしっかりと保たれています。