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極度のストレスにさらされて、何もかも思う通りに進まない。怒りを爆発させたり、泣き喚いたりして、自分で自分を制御できなくなる。私たちが立ち向かっているのは、コロナ禍がもたらした前代未聞の複雑で壮絶なストレスだ。それらに対応するには、私たちの内側には「子どもの自分」「防御者」「大人の自分」という3つの自己が存在し、直面する状況に応じて行き来していることを正しく理解しなくてはならないと、筆者らは指摘する。そのうえで、自分の限界を認め、受け入れるための4つのステップを提示する。


 アリス(38)は、ニューヨークを拠点とするスタートアップのコンサルティング会社のCEOだ。筆者らが彼女と一緒に仕事を始めた2020年初頭、同社は急成長を遂げていた。しかし、そこに新型コロナウイルス感染症のパンデミックが襲った。アリスは、クライアントに対面で提供していたサービスの大半を、そのレベルを変えないまま、オンラインによる個別対応へと迅速にピボットする必要に迫られた。

 同時に、アリスは7歳と5歳の子どものバーチャルスクールの手伝いもしなければならなかった。夫は協力してくれたが、病院勤務の医師のため、それまでと変わらず出勤して長時間働いていた。近くに住む友人や隣人、そして学校以外の時間に子どもたちの面倒を見てくれていた父親とも距離を置かなくてはならなくなった。

 アリスは当初、そうした状態を克服すべき課題の一つと考えていた。これまで多くの挫折を経験した彼女は、今回も乗り越えられると確信していた。「私は乗り切ることができる」と自分に言い聞かせていたが、何カ月が経っても終わりが見えなかった。彼女のアシスタントはシングルマザーだったが、その間、仕事と子育ての両立が立ち行かなくなり、退職してしまった。

 ビジネスが苦戦すると、アリスは次第に不安になり、バーチャルチームとのつながりが断たれていると感じるようになった。チームが効率的に仕事をしているのか疑い始め、指示を多く出すようになると、チームはマイクロマネジメントされていると感じ、不信感を抱いた。夫とのケンカも増え、子どもたちに対して怒りを爆発させることもあった。

 この1年間、筆者らはアリスの状況と似た話を数え切れないほど耳にしてきた。さまざまな話を聞いていくうちに、対症療法では不十分であることが明らかになってきた。クライアントが直面している問題の複雑さと凄絶さは、彼らの現時点での思考の複雑さや感情的なレジリエンス(再起力)を超えている。筆者らは「何」だけでなく「なぜ」、つまり根本的な原因にも注目することにした。

 そこで気づいたのは、私たちの人生を主に支配する「自己」は、最悪の恐怖から自分を守るかもしれないが、成長や学習、適応、進化を妨げるという点だ。さらに、私たちは無意識の本能として、特にプレッシャーのかかる状況下では、自分がすでに信じていることを強化する情報を求めてしまう。

 PCで要求されたことがその能力を超えていれば、OSをアップグレードすることができる。しかし、あなたの内にあるOSをアップグレードするには何が必要だろうか。自分の体、心、感情に何が起きているのかを理解することは、仕事に必要なスキルと同様、少なくともパフォーマンスを持続するために欠かせない。

 筆者らは神経科学やトラウマインフォームドケア愛着理論に基づき、人々が生活の中でさまざまなレベルのストレスにどのように反応するのかを深く考察した。筆者らが開発したロードマップは、誰しも単一の安定した自己によって動かされているわけではないという前提に立っている。

 実際の私たちは無意識のうちに3つの主要な自己、すなわち「子どもの自分」「防御者」「大人の自分」を行き来しており、これらは直面する要求に応じて、注意と制御を奪い合っている。