より優れたビデオチャットを開発する

 ビデオチャット体験のカギを握るとして、音質は注目されつつある。

 筆者がCEOを務めるパイロトリーやブルージーンズ・ネットワークといった企業は、未来のバーチャル世界への転換に向けて、歩みを進めている。両社とも、オーディオプロセッシング領域のリーダーと協力して、ビデオチャットにアルゴリズムを適用し、安定したオーディオミキシングによって会話とその周辺の明瞭度を上げている。

 最近、ベライゾン・コミュニケーションズに買収されたブルージーンズは、ユーザー体験の質を向上させるためにパートナーのドルビーラボラトリーズと早くから協力した企業の一つだった。

 これにより同社は、明瞭な会話を価値提案の前面に押し出すべく、ドルビーボイスというシステムを取り入れた。オーディオの音量をノーマライズし、個々の声の帯域幅を最適化して、ノイズを減らし、クラウドである程度のミキシングを行えるようにすることで、会議で複数の出席者が話しても声を消し合わないようにしたのである。

 他社は、この先例に従うことができるだろう。

 ドルビーは現在、アプリケーションでオーディオ機能を簡単に改善するための取り組みを行っている。ドルビーのコミュニケーションズ・ビジネスグループのチーフアーキテクトであるポール・ブステッドは、このようなテクノロジーの用途の拡大はドルビーにとっての優先事項だと述べている。

「私は20年以上にわたって、研究者、エンジニア、アーキテクトとして、音質およびビデオコミュニケーションを専門とし、オンラインでのコミュニケーションができる限り自然になるよう、精力的に取り組み続けている」

 パイロトリーのビデオチャットプラットフォーム「リールチャット」は、ビデオゲームをプレーしているのに近いバーチャル環境を構築することを重視している。

 リールチャットが最初に使われたのは、バーチャルなフォーカスグループだ。フォーカスグループでは、速いペースで自由に交わされる会話が重要で、複数の人の声を同時に聴き取ることができる。ちょうど会議やハッピーアワーと同じだ。それゆえパイロトリーではオーディオマッピングを優先事項として、会話の参加者が最大限心地よく感じられ、直感を発揮できるようにすることを目指している。

 バーチャルでも人間のコミュニケーションを円滑に進めるためのカギは、音がより自然な状態で存在する環境にユーザーを置くことだというのが、パイロトリーの信念である。

***

 長引くコロナ禍で、現実世界での対面でのコミュニケーションが極端に制限される状況は続いている。ビデオチャット技術の進化を調整し、加速することは、ビジネスや高等教育、社会的つながりの構築を成功させるための中軸を成すだろう。

 これまでユーザー体験の中心的な要因として視覚が優先され、音質は長い間無視されてきた。だが、いまではコミュニケーションの未来を担っている。

 ビデオゲーム業界や音楽業界は、これを理解している。コラボレーションや会議プラットフォームが進化する次の段階では、音楽業界で使われてきたミキシング技術を上手に取り込むことで、ユーザー体験を向上させるはずだ。


HBR.org原文:Video Chat Audio Is Terrible. But It Doesn't Have to Be, March 23, 2021.