ビデオチャット企業は
音楽やビデオゲームから何を学べるか

 バーチャル環境に飛び込むと、たとえばビデオゲーム『コール オブ デューティ』にマルチプレイヤーモードで参加した時には、完全に一人称視点に没入して、何時間でも過ごすことができる。

 ゲーマーが、ズームのようなプラットフォームのユーザーほど疲れを感じないのは、偶然ではない。環境音、アクションの音響効果、バーチャルチームメート同士の会話、その他の音に関して、視覚体験と音を明瞭化する機能とが完全に対になっているからだ。目の前で何かが爆破している一方で、遠くでコオロギが鳴き、画面中央の右側でチームメートが話していて、それら全部をヘッドホンの中で聞くことができる。

 端的に言えば、これが可能なのはオーディオマッピング(あるいはミキシング)のおかげである。何かをユーザーから一定の距離や方向にある場所に配置することで、音波は位相やノイズの問題を軽減するために信号処理で編集されるのだ。

 これと同様のことが、音楽にも当てはまる。気づいていないかもしれないが、素晴らしい音楽体験を創出するために多数の音を加えるようになってから、音楽ではミキシングが欠かせないものとなっている。

 音楽プロデューサーはヒットソングを世に送り出すために、メインボーカルとバックシンガーの声をブレンドするだけでなく、弦楽器、管楽器、ベース、その他の楽器の音をよどみなく加えていく。オーディオエンジニアはこれらの楽器の音がぶつかり合うことなく、歌の音量を適切に保ち、音を適切にステージング(フィルタリング、コンプレッシングなど)することで、歌の中核となる感情が伝わるようにしている。

 音楽あるいはビデオゲームと比べると、ビデオ会議の音質に、まだどれだけ進化の余地があるかがわかるだろう。

 目を閉じて、好きな歌を1曲聞いてみてほしい。メロディを奏でている楽器との比較で、ボーカルがサウンドステージのどこに位置しているかを聞き分けられる。次に、デスクトップで自分以外に2人が参加するグーグルチャットで、それぞれの声がどこから出ているかを聞いてみてほしい。ビデオチャットではサウンドステージが使われるべきレベルに達していないことに気づくだろう。

 ビデオチャットの開発者は、音楽業界のオーディオエンジニアからヒントを得ることができる。オーディオエンジニアは何十年にもわたり、ほぼ完璧に近い音響体験を提供してきた。これをどのように、複数の人々が出席するバーチャル会議の音質に適応できるか考えてみよう。

 ある人がサウンドステージの左側から、別の人が右側から話し、サウンドステージの外側では環境音楽が流れているという状況を想像してほしい。すると、より自然にやり取りできるようになり、サウンドステージにビデオチャット体験を加速させる余地を与えることで、ユーザーの脳は実際にスクリーンに映し出される音源と会話の音声をうまくマッピングできる。

 このアプローチはユーザーが自分の位置をより的確に把握するのに適していて、最終的にはズーム疲れの軽減につながる。