●相手は自分の指示に従うはずだと思い込む

 社内のあらゆる部署の人たちが、そして時には社外の人さえも、報告書を発行したり、概要を執筆したり、イニシアチブに取り掛かったりする前に、フランチェスカに専門家としての意見を求めていた。だが、ほとんどの人は同じミスを繰り返した。

 フランチェスカは彼らの助けになればと思い、仕事を提出する前に遵守してほしいベストプラクティスをまとめたガイドラインを作成した。

 ところが、同僚のほとんどがそのガイドラインを無視して、水準以下の仕事をメールで送り続けた。彼女から詳細なフィードバックを受け、あわよくば書き直してもらうことを期待していたのだ。実際、彼女は何度となくそうしていた。

 フランチェスカは、彼らを再教育する必要があった。何時間もかけて自分で書類を書き直す代わりに、そのまま差し戻して、たとえばガイドラインの5と7に従って再提出するように求めたのだ。

 相手の自立を助けるためにガイドラインを作成する時には、ディテールにこだわりすぎて自主性の育つ機会を奪わないようにする。

 ●自分なしでは仕事の質が落ちると思い込む

 フランチェスカが間違うことはめったにない。彼女の研究は広く引用され、高い評価を受けている。彼女は、相当な時間をつぎ込まないとプロジェクトの質が落ちることを理解し、それをうまくやれるのは自分しかいないと思い込んでいた。

 だが、フランチェスカは頭を切り替えて、自分で全部こなすのではなく、バッファーとして空けていた時間の一部を、同僚の指導に充てることにした。何度か繰り返すことが必要だったが、同僚は次によりよい結果を出すためのスキルを習得することができた。

 私たちは、自分は余人をもって代えがたい人材である、あるいは自分はたいていの人たちよりも賢いという神話を守ることに加担してしまいがちだ。誰でも必要とされたいし、評価されたいと思う。だが、自分だけが答えを知っているというこだわりを捨てれば、少数に永続的に依存するのではなく、大勢の能力を構築することが可能になる

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 マジカルシンキングに依存して時計の暴挙を征服しようとすれば、仕事の遂行能力を弱めてしまう。自分の内にある時間の幻想と正面から向き合うことで、神業に頼ることなく、自己の能力を高め、非凡な前進を遂げることができるのだ。


HBR.org原文:Be More Realistic About the Time You Have, March 23, 2021.