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タスクを書き出して、それぞれに必要な時間を割り当てる。意気揚々と作業を始めたものの、その日に終わらせるはずの作業が完遂できない。疲れ果てて、次の日もタスクを書き出すものの、結局また持ち越してしまう状況が日常茶飯事になってはいないだろうか。膨大な仕事をわずかな時間で片づけられるというマジカルシンキングに陥ると、期限通りに仕事を提出できないだけでなく、相手を失望させ、人間関係すら危うくなる。本稿では、こうした思い込みを生じさせる5つの罠について解説し、それぞれの処方箋を紹介する。


 私たちはストーリーテリングの達人だ。自分に夢物語を語り、膨大な量の仕事をわずかな時間で片づけられる気になる。タスクを次から次へと書き出し、そのすべてを通常の就業時間内に完了できると確信する。そして1日が終わる段になって、まだ仕事が残っていることに愕然とし、ゴールに向かって猛ダッシュする。

 私たちは自分の時間で何ができるかについて、わざと自分を欺いているわけではない。だが、過去のエビデンスがあるにもかかわらず、予測エンジンが作動しなくなった瞬間、ごくふつうの1日に桁外れの成果を達成できると確信してしまう。

 マジカルシンキング(呪術的思考、魔術的思考)の世界にようこそ。誰もが、無尽蔵な時間というありえない幻想を追いかけて、この世界にたどり着いた。

 野心的すぎる計画であっても、発奮して期待以上の成果を上げられるならば何の害もないと自分を説得する。特にリモートワークの場合には、やりすぎるぐらい仕事をして、自分の価値を相手に示さなくてはいけないと思い込む。

 だが実際には、マジカルシンキングに陥ると、自分を頼りにしてくれる相手を失望させ、期限に間に合わず、疲れ果て、インスピレーションを失うことになる。

 時間をめぐる幻想から解放されるのは、そう簡単なことではない。上司は、私たちが超人ヒーローのごとく登場すれば喜び、実際に成果を出せば気前よく報いてくれる。だがいずれ、おそらくは想像以上に早い段階で、どのヒーローも力尽きてしまう。

 トップクラスのバイオテクノロジー企業の研究者、フランチェスカの例で考えてみよう。

 彼女は卓越したソートリーダーであり、専門分野で多くの論文を世に送り出している。同僚にとっては得がたい協力者であり、キャリアの浅い多くの女性たちのメンターでもある。そのうえ、過酷なまでの講演スケジュールを着実にこなし、消耗性疾患で苦しむ甥を支援している。

 仕事に誇りを持っているフランチェスカだが、人材管理をしたり、運動したり、自分自身の子どもを持つことを考えたりする時間の余裕はない。もっと現実的なスケジュールを組むことが、彼女の切実な希望だ。

 筆者がカウンセリングを始めると、フランチェスカは少しずつ、自分が時間の借金をしていることに気づき始めた。多くのことに手を出しすぎて、手に負えなくなり、しかも助けてくれるリソースはないに等しい。自分の健康や個人的な人間関係にしわ寄せが生じるのみならず、同僚も彼女と協働している仕事で不当な負担を負わされ、失望し、いら立っていた。

 コミットメントしすぎるというフランチェスカのパターンには、時間をめぐるマジカルシンキングの5つの要素が表れていた。筆者のクライアントの多くが経験するのと同じ、思い込みの罠に陥っていたのである。それぞれについて、以下に処方箋を紹介しよう。