(4)古い真理:顧客への求愛はデートのようなもの

 新しい真理:顧客への求愛はオンラインデートのようなもの

 マーケティングは長年のあいだ、マスリーチやターゲットリーチを媒体ごとに格安の値段で購入し、消費者のアクションを獲得することを重視してきた。簡単に言えば、できるだけ多くのパーティーやバーに出かけて、特別な1人との出会いを期待するようなものだ。つまり、自然発生的なセレンディピティ(偶然)の世界であり、対面での出会いが中心だった。

 やがてオンラインデートが登場し、画面をスワイプしながら出会いを求めるようになった。いまや理想の相手を見つけることは、偶然よりもデータやアルゴリズム次第かもしれない。マーケティングの世界も、ブランドマーケティングによるリーチの構築から、パフォーマンスマーケティングによるリードの獲得に移行しつつある。パンデミックによるデジタルチャネルの加速は、その傾向をさらに強めている。

 ただし、パフォーマンスマーケティングが強力かつ重要な位置を享受している一方で、優秀なCMOは、ブランドマーケティングとパフォーマンスマーケティングの絶妙なバランスが最高の結果をもたらすことを理解している。最も簡単に定量化できるものに偏重しやすいことに、真剣に抗わなければならないのだ。

 多くの企業は、顧客関係管理(CRM)チームとメディア担当チームの距離をこれまで以上に縮め、一連の流れ全体を把握しやすくして効率化を図っている。CRMは、主にファーストパーティデータ、すなわち企業が(もちろん顧客の同意を得て)所有する顧客データを活用して、クーポンやパーソナライゼーション、メールによるマーケティングなどの取り組みを推進する。

 一方で、このファーストパーティデータは、デジタルメディアなど1対1のターゲティングを可能にするアドレサブルな広告フォーマットの効率を大きく高める。2022年1月までに主要なブラウザがルールを変更するのに伴い、サードパーティデータの価値は低下する。マーケターは自分たちが行きたい「オンラインデート」を設計して、自社のデータの力を活用する新しい手法を学び、パブリッシャーと関係を築く新たな戦略を練ることを学んでいる。

 新しいルールに合わせてターゲティングの(つまりデートの)戦略が変わっても、企業はブランドマーケティングとパフォーマンスマーケティングを並行させることが重要になる。ボトムファネル(見込み客が新規顧客になる直前の段階)の戦略がトップファネル(最初に見込み客になる段階)の獲得目標を牽引することもあれば、その反対もある。つまり、両方がそろうとうまく機能する。

(5)古い真理:顧客をマーケティング戦略の中心に据える

 新しい真理:顧客をカスタマージャーニーの中心に据える

 顧客中心主義は、新しい概念ではない。しかし、顧客とのやり取りにおいてサイロ化した各部門は、政治力学や組織図、テクノロジー、地理的条件などの理由で連携していないことが多い。

 問題は、企業は自分たちのことを総合的に知っていると思っている顧客に対し、こうした内部の断絶をどのように隠すかだ。カスタマーサービスに電話をかけ、コールセンターの担当者やチャットボットと話したことは誰でもあるだろう。彼らは販売チャネルと同じ情報をもとに動いているわけではなく、彼らが得た情報は販売チャネルに届いていない。

 マーケティングは基本的に、顧客との関係の始まりにすぎない。たとえば、B2Cでは、顧客の興味を引いて、直接または間接的に販売に結びつけ、できれば顧客を維持してブランドのファンになってもらい、顧客単価の上昇につなげていく。マーケティングはE2E(エンドツーエンド)を完結させるという文脈で捉え、点と点を可能なかぎり結びつけなければならない。

 顧客対応のすべてのオペレーティングモデルを一極に集約できる、あるいは集約しなければならないと考えるのは、現実的ではない。組織の再編成がすべてを解決するというのは、よくある誤解だ。

 それよりもはるかに重要なのは、オペレーティングモデルを慎重に検証して、プロセスやテクノロジー、人材、データモデル、KPIなどを考慮しながら、顧客のニーズに合わせて客観的に調整する適切な方法を見出し、それをもとに変革を進めることだ。

(6)古い真理:人間関係は重要である

 新しい真理:人間関係がすべてである

 顧客と信頼にもとづく関係を築くことは、言うまでもなく重要だ。たとえば、広告はブランドの価値などについて消費者に約束し、製品やサービス、顧客体験によってそれを実現する。

 しかし、コロナ時代は、特にB2Bセールスにおいて、人間関係が改めて重視されるようになった。バーチャルな営業環境でも、既存の人間関係を持っているチームは、それまでの絆の強さを活かして収益成長の勢いを維持している。一方で、新規顧客の開拓には、製品ではなくソリューションを販売できるような進化したスキルが必要になる。

 いずれの場合も、信頼と誠実さが、市場の勢いを牽引する基本的な力になる。B2B企業の営業やマーケティング部門の責任者は、オンラインの交流という新しい世界で人間関係を築くのに最適な資質を見極めるために、人材の見直しを迫られている。

 これは従来の人間的な魅力(と必要経費)より、洞察力とソリューションがものを言う世界だ。顧客のニーズに耳を傾け、そのニーズを満たすためのソリューションを考え出せる人が、信頼を築いて成果を手にすることができる。

 B2Cにおいても、信頼は非常に大きな役割を担う。信頼は、企業と消費者のあいだで行われる価値交換の基盤になるのだ。

 企業が消費者から同意を得て収集する個人情報への依存度が高まるにつれ、消費者のプライバシーに関する規制を遵守してデータの安全性を確保しなければならないだけでなく、プライバシーを管理する透明性の高いインターフェースを設計することによって、さらなる顧客ロイヤリティと差別化の構築を検討できる。消費者は、自分が企業と何を共有することに同意しているのを理解すれば、よりよい選択ができ、その透明性がさらに深い信頼を育む。