トップダウンで始めて成功体験を積み上げる

バーチャレクス・コンサルティング
森田智史
常務執行役員
ビジネスインキュベーション& コンサルティング部 部長

 なぜ正しい顧客との関係性が重要なのかは、カスタマーサクセスというコンセプトの特質にある。カスタマーサクセスは小手先の戦術では実現できない。全社レベルでのトータルな活動が求められる。森田氏は「特定の部署だけで進めても、顧客との関係が分断されてしまいます」と語る。

 製品開発、マーケティング、営業、サポートなど全ての部門がカスタマーサクセスを理解し、連携しなければ、顧客との対応のどこかに綻びが生じる。全社をあげて取り組むには、経営方針としてカスタマーサクセスを追求するというトップの決断が必要になる。

「カスタマーサクセスには二つの側面があります。業務オペレーションとしての側面と思想としての側面です。カスタマーサクセスはITなどを駆使して仕組みを作る“サイエンス”であり、企業としての経営哲学を反映した“アート”でもあるのです。この両方の世界観を理解したうえで取り組まなければ、全社レベルでの活動の成果は上がりません」(奥村氏)

 しかし、現状ではカスタマーサクセスへの認知度は低い。経営者が二の足を踏むことも考えられる。その場合にはスモールスタートでのアプローチも必要になる。森田氏は「カスタマーサクセスを理解している人たちで小さく始めて、成功事例を作ってボトムアップを図っていくことをお勧めしています。これを我々は『マザーセンター』アプローチと呼んでいます」と語る。

 小さな実績を上げて経営トップの決断を引きだし、企業としてカスタマーサクセスの成功体験を積み上げる。そのなかで、企業文化と業務プロセスを変革し、企業の成長につなげるのだ。