●クリーンエネルギー経済への公共投資が拡大する

 バイデン=ハリス政権はすでに、インフラとクリーンエネルギーに2兆ドルを投資する計画を発表している。2035年までに国内電力を100%クリーンエネルギーにすること目指して、クリーンエネルギー投資の40%を低所得コミュニティに向ける意向を示している。また、カリフォルニア州が全米で最も厳しいクリーンカー基準を設けることも許可する見込みだ。

 環境正義を支持し、連邦政府の所有地における化石燃料事業の新規許可を停止するという大統領令に、バイデンは署名した。さらに、ドナルド・トランプ政権が撤回した環境規制を復活させるつもりだ。

 バイデンはクリーンエネルギーを支援する中で、この業界は競争力が高く、今後一段と競争力が高まっていくことを認識している。現在、陸上風力発電と太陽光発電の価格は、1キロワット時当たり5セントを下回っている。これに比べて、化石燃料発電の価格は、1キロワット時あたり5~18セントだ。さらにイノベーションが続けば、再生可能エネルギーの価格競争力はさらに高まるだろう。

 米国の大手企業の多くも同じ考えだ。すでに79社(現在も増えている)が、使用電力を100%再生可能エネルギーに転換する「RE100」イニシアティブ、電気自動車導入を促進することで輸送手段のゼロエミッション化を図る「EV100」イニシアティブに参加し、市場が環境汚染の原因となっている化石燃料からシフトする助けになっている。

 クリーンエネルギーに対してこのレベルのコミットメントがあれば、米国は世界の再生可能エネルギーのS字成長カーブを加速できるだろう。潮目がすでに変わった証左である。化石燃料に依存する企業や業界は、できるだけ早く再生可能エネルギーとインフラに移行しなくてはいけない。さもないと、停滞したエネルギー資産とともに取り残されるおそれがある。それはグローバル資本市場に大きなリスクとなる。

 ●企業のアドボカシーが、ネットゼロへのスムーズな移行を牽引する

 バイデン=ハリス政権では気候変動対策に関して、官民による対話と協働の機会が拡大する。企業のリーダーはこれを機に、気候変動とグリーンリカバリーについて、明確かつ野心的な政策を支持すべきだ。

 重工業をはじめとするいくつかのセクターでは、脱炭素化に必要なソリューションを特定してスケールアップするために、官民の協働がカギになる。たとえば、英国はこのニーズを認め、業界が熱回収や水素などのソリューションを足場にできるよう、4000万ポンド(約60億円)の新規投資を行う。

 また、世界経済フォーラム(WEF)の新しい「ミッション・ポッシブル・パートナーシップ」(MPP)は、世界の重工業と輸送バリューチェーン全体に関わるグローバル企業、バイヤー、投資家、政策立案者のネットゼロに向けた進捗を牽引している。

 MPPの一環として、欧州の航空機メーカーであるエアバスはすでに、KLMオランダ航空をはじめとする航空会社、英ヒースロー空港、さらにシェルのような燃料プロバイダーと協力し、このセクター向けのネットゼロ計画策定に取り組んでいる。その中で、政策立案者の関わりが重要な役割を果たすだろう。

 企業は新政権に関わり、課題と成功を共有すべきだ。それは、企業のスムーズな移行に必要な政策を導き出す助けになるだろう。また、米国が主催した4月の気候変動サミットは、2021年11月に予定されている第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)に向けた重要な機会となった。

 気候変動サミットは、温室効果ガスの排出量を2030年までに2005年レベルから少なくとも半減させるという、米国の野心的だが達成可能な目標に企業が関与し、支持を表明するよい機会になった。このような2030年に向けた目標は、ネットゼロの未来の触媒となり、力強い景気回復に拍車をかけて、何百万もの高賃金の雇用を創出し、コロナ禍から真に「よりよい復興」を遂げることを可能にするだろう。

 これは米国にとって、そして世界にとってのターニングポイントだ。企業はこれからでも、新たなネットゼロ経済に適応し、グリーンリカバリーをサポートできる。ただし、一刻も猶予はない。


HBR.org原文:What Biden's Sustainability Agenda Means for Business, March 03, 2021.