●対応の遅れが経営リスクになる

 企業が速やかに気候変動対策を取らなければ、自社製品やサービスが立ち行かなくなるおそれがある。関連規制が導入されるにしたがって、まだ脱炭素化に着手していない企業は市場シェアを失い始め、成長とイノベーションの時間と機会を逃してしまうだろう。

 企業にとっては、現時点で時間をかけて戦略を立てたり準備したりするほうが、突然移行を余儀なくされる場合に比べて、コストは大幅に抑えられる。足踏みをしている企業は、デジタル化の波への対応が遅れたために凋落したブロックバスターやコダックと同じ運命をたどることになるだろう。

 気候変動対策で模範となるのは、早い段階で断固たる行動を取り、業界大手の地位を維持しているデンマークの電力大手オーステッドだ。同社はブラック(石油やガスなどの化石燃料)からグリーン(洋上風力発電)企業への移行を完全に終え、好業績をマークしている。

 ●投資家が、気候変動対策を講じる企業を好むようになる

 投資家はすでに、大規模環境汚染に関与する企業をポートフォリオから外しつつある。こうした企業は今後、押し寄せる規制強化の波に多大な影響を受けると見られているからだ。

 世界最大の資産運用会社ブラックロックは現在、投資先企業に対して2050年までのネットゼロ実現を目指すよう求め、対応しない企業については資金を引き上げると伝えている。さらに、ESG(環境、社会、ガバナンス)の格付が高い企業のほうが、そうでない企業に比べて一貫して業績が優れている傾向がある。この結果、投資先としてグリーンビジネスに資金が流れ込んでいる

 ●気候リスクと温室効果ガス排出量の開示が義務化される

 ビジネスの世界には「測定しないものは管理できない」という広く知られた概念がある。企業の温室効果ガスの排出量についても同じだ。

 バイデン=ハリス政権は、上場企業に気候リスクと温室効果ガス排出量の算定および開示を義務づけると約束してきた。これは、金融規制当局は「気候変動が米国の金融システムにとって新たなリスクとなっていることを認識しなければならない」という、2020年の米商品先物取引委員会(CFTC)の警告を踏まえたものだ。

 企業が気候関連のリスクを評価・管理・削減し、規制を先取りした措置を取るには、まずCDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)を通じて環境インパクトを開示し、気候関連リスクに対処するための科学的根拠に基づいた目標を設定するのがよい。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の勧告に従うのもよいだろう。

 ●カーボンプライシングの導入準備が進む

 これまでの言動を見る限り、バイデンはカーボンプライシング制度の立法化を支持している。環境汚染に価格をつけることは、米国の民間部門に大きなインパクトを与えることになるだろう。

 企業はいまこそ、社内のカーボンプライスを設定し、自社ビジネスのどの部分が最大のリスクになっているか特定すべきだ。そうすれば、それに従って経営戦略や投資を調整できる。カーボンプライシングの設定方法については、CDPが企業向けにガイドラインを提供している。