●英雄的な行為は中毒性があり、コミットメントの証拠ではないことを理解する

 心理学の英雄症候群(成功を収めるためにわざと問題を引き起こすこと)のように、企業文化が、火に飛び込んで火を消す勇敢さに報酬を与える、依存的環境をつくり出す。このような環境で働く人は、自分が認められる唯一の方法は、英雄的な行動を示すことだと思うようになる。

 ある企業では、徹夜したように見せかけるために、午前2時34分にメールが送信されるよう設定したり、わざと早朝に出社して、仕事で疲れ果てているかのようにデスクに突っ伏している姿を誰かに見られるよう仕組んだりする従業員がいた。

 会議前の軽い雑談で、膨大な「やることリスト」やリソース不足のプロジェクトに言及し、「難局にあってもポジティブな姿勢を忘れない私」をアピールするのも、英雄の地位を得るための演出だ。

 すべての復旧プロセスがそうであるように、まず問題の存在を認めることから始める必要がある。英雄的な環境は、大きな危機でも小さな危機でも成長し、ドーパミンによってハイな感覚をもたらし、アドレナリンの「二日酔い」を日常的な状態にする。これは燃え尽き症候群や、メンタルヘルスの問題を引き起こしやすい状態だ。

 この種の英雄的な働きは、仕事に強力にコミットしている部下がいる証拠ではないことを、マネジャーであるあなたが認識する必要がある。それはむしろ、あなたの組織が非常に未熟である証拠だ。

 英雄的行為が必要になるのは、組織のプロセスが予期せぬ事態の衝撃に耐えられるようスケールされていないために、そのギャップを個人に埋めさせていることを意味する。それを正直に認めることができれば、こうした無効なプロセスに埋もれた英雄文化の根を引き抜くことができるだろう。

 ●リソース配分の誤謬を発見する

 英雄文化を永続させる最大の原因の一つは、不誠実なリソース配分と優先順位の付け方だ。「5キロ用の袋に10キロの仕事を入れる」ようなもので、組織の能力やリソースを超えたプロダクトを求めている。そのギャップを埋めるために英雄が頑張るほど、限界を超えてリソースを使ってもよいという誤解を補強することになる。

 英雄的行動よりもたちが悪いことに、これは幅広いごまかしを永続させる。著しく楽観的な予測を立てて、非現実的な期限を約束し、予算を締め付けることをスタッフに強いる。その結果、英雄が駆けつけて、事態を収拾する環境が生み出されるのだ。

 成熟した企業は、リソースを配分するプロセスに抑制と均衡の仕組みを盛り込み、コミットメントと、それを実現するためのリソースの間に大きなギャップがないか、率直に検討できるようにする。現実にリソースを与えられる以上の成果を求めることはない。

 また、定期的に進捗状況をモニタリングして、不可能な約束ではなく、事実に基づく調整を可能にする。不足がある場合、リーダーはマネジャーにもっと努力するよう圧力をかける前に、どうなっているのかと好奇心を持って質問をする。するとマネジャーは、リソースに制約があることを進んで認めることができる。

 成熟したリソース管理により、予期せぬ難局が生じた時も、組織は英雄を頼りにする必要なく、より有効に対処できるようになる。