ケーススタディ(2)チームメンバーがみずからエンパワーメントできるように促し、優しさと思いやりを持って接する

 ジョナサン・タムは、ソフトウェア企業ライフレイのマーケティング担当バイスプレジデントだ。彼は幸いにもこれまでのキャリアの中で、やる気をなくした部下に対応する必要に迫られた経験はさほど多くないという。しかし、やる気を失った部下に出会った時は、本人がみずからをエンパワーすることで問題の解決を試みると語る。

「重要なのは、その部下のために私に何ができるかだけでなく、本人が自分のために何ができるかだ」と、ジョナサンは言う。

 数年前、ジョナサンは当時勤めていた会社で、自分が担当してしたイベントチームに新しく雇用されたメンバーをサポートした。この人物を仮にエリンと呼ぼう。エリンはイベント運営の経験があり、すぐに生産性の高いチームメンバーになった。「彼女は賢く、有能だった」と、ジョナサンは振り返る。

 しかし数カ月が経過すると、ジョナサンとエリンの直属の上司は、彼女の振る舞いが変化していることに気づいた。「エリンの仕事量が減り、以前のように一生懸命ではなくなった。ミーティングでは1人で座り、めったに発言しない。彼女はいつも下を向いていた」と、ジョナサンは語る。

 ジョナサンには、エリンがなぜこのような振る舞いをするのか、その理由が思い当たらなかったため、1対1のミーティングを設定した。彼は自分が観察してきたことをエリンに伝えた。

 エリンは自分がやる気をなくしたことを認めたが、その理由を聞いてジョナサンは驚いた。「自分はこのチームに合わないと、エリンは言った」と、ジョナサンは振り返る。エリンは「自分は仲間に入れてもらえない。ここでは友人ができない」と語ったのだ。

 ジョナサンは共感を示した。彼女がいら立っているのは理解できると伝えた。エリンが加わったのは、その時点で、すでに3年間にわたって一緒に働いてきた結びつきの強いチームだったからだ。メンバーは全員同年代だった。「だが、彼女は自分が受け入れられているとは実感できなかった」

 ジョナサンはエリンをサポートして、この状況を改善する方法についてブレインストーミングを行った。「彼女には、自分の運命は自分でコントロールできるということを知ってほしかったからだ」

 そこで、ジョナサンはある提案をした。「私はこう語りかけた。『エリン、自分から出ていこう。傍観して、ランチやハッピーアワーに招待されるのを待っていてはいけない。誰かが、週末はどうだったか聞いてくれるまで待っていてはいけない。自分も一緒に行っていいか、聞いてみよう』と」

 ジョナサンはエリンに対して、自分から意見を言うにはどうすべきか、どのようにチームに貢献すべきか、コーチングを続けた。

「フリーアドレスのオフィスでは、働く環境が極めて重要になる」と、ジョナサンは指摘する。「一緒に働く人々と過ごすのが楽しければ、その会社に長く留まり、一生懸命働く可能性が高くなる。チーム文化は本当に重要だ」

 すぐに習慣を変えるというわけにはいかなかったが、時間の経過とともにエリンの振る舞いは変化し、再び仕事に力を注ぐようになった。


HBR.org原文:What to Do When Your Employee Is Totally Checked Out, March 05, 2021.