最後に、助けを求めるべき時を知る

 私は企業で講演をするたびに、「誰かが人種差別について苦情を申し立てた場合、それに対処するのは全員の責任です」と強調している。そうした時には全員が立ち止まり、その出来事に注意を向け、耳を傾ける必要がある。

 私が知る限り、IT企業の経営陣の最大の欠点の一つは、当事者意識の欠如だ。あなたが上司に差別を受けたとか、職場が敵対的であると感じるとか、人種差別的な行為を見たなどと伝えた時は、あなたの懸念は「常に」正当で、深刻に受け止められるべきものであることを覚えていてほしい。

 悲しいことに、私の経験では、このような苦情が真剣に受け止められることはほとんどなく、問題を起こした人に懲罰が与えられることもほとんどない。私が関わった監督者や管理者のほとんどがまず思いつくのは、差別された人に責任を押し付け、「冗談」の受け止め方を学ぶ必要があると言ったり、人種差別的な出来事を「文化的無神経」の例として説明したりすることだ。

 このような場合、黒人の従業員としては、耳を傾けてもらっているとは感じられない。自分が正気ではないと思ったり、「問題は自分にあるのではないか。自分はここに合ってないのではないか。自分が変わるべきなのではないか」と考えたりしてしまうかもしれない。

 あなたのそんな疑問に、私が答えよう。あなたが問題なのではない。あなたは常に馴染めているというわけではないだろうが、だからといってあなたが変わる必要はない。これは従業員の問題でも部署の問題でもなく、組織の問題であり、組織が責任を負わなければならない。

 上司が、差別や人種差別に関するあなたの報告に対処しない場合は、その上の上司に伝えよう。あなたの上司の上司とアポイントメントを取り、問題を提起する理由を説明する。その人も適切に対処しない場合は、その上の上司に相談する。問題を上に上げ続けることを恐れてはいけない。そして、最も上にあるのが人事部への報告だ。

 できる限り強く主張するためには、文書を提出する必要がある。あなたや同僚が経験したすべての出来事を、発生した日時、何を言われたか、何をされたか、誰が関与したかなどを含めて書き留めておく。あなたの主張を裏付け、サポートしてくれる味方がいればなおよい。一人の人間を無視するのは、複数の人間を無視するよりも簡単だ。

 時には決断を下し、いまの会社でありのままの自分で本当にいられるかどうかを、判断しなければならないこともあるだろう。自分や、自分のモラルを妥協してまで残らなければならないのなら、それはあなたにとって適切な場所ではない。会社を辞めることを選んでもかまわないのだ。

 恐怖や疑問を感じた時は、私がしたように、ゾラ・ニール・ハーストンのこの言葉を思い出してほしい。「痛みについて沈黙しているなら、彼らはあなたを殺し、あなたがそれを楽しんだと言うでしょう」

 2021年は、人種的な対立がいっそう深まっている。1月6日に起きた、ドナルド・トランプの支持者や極右団体、白人至上主義者の組織による首都ワシントンの連邦議会議事堂襲撃事件により、多くの人が人種について関心を抱いている。企業は、人種差別や、誰にとっても快適で魅力的な環境をつくるにはどうすべきかに取り組むことを、あらためて余儀なくされている。

 IT業界の黒人従業員として、あなたの真実を語ってほしい。自分の経験を伝えよう。業界で数少ない存在として、あなたが直面したことを薄れさせてはいけない。

 私は率直に発言するようになり、ここでアドバイスしたことを実践し始めた時、自分が個人ではなく、集団の一員であることに気がついた。

 IT業界をより公平にするために私がやっていることは、私だけでなく、ネットワークエンジニア、プログラマー、プロジェクトマネジャー、そして後に続くすべてのプロフェッショナルのためだ。その中には、あなたも含まれている。


HBR.org原文:What It's Like to Be a Black Man in Tech, March 4, 2021.