●自分の中核的価値観を特定する

 アイデンティティは時間とともに変化するとはいえ、ほとんど変わらない部分がある。中核的価値観だ。

 価値観とは、自分が体現して大切に維持するもの、すなわち自己定義のエッセンスを成す部分といえる。それはインクルージョン(包摂)や高潔性、創造性、自律性、あるいは誠実さといったことかもしれない。

 アイデンティティの中でも時間とともに変化するのは、こうした価値観の実現方法や相対的重要性だ。それらは仕事に意義を見出したり、達成感を得たりする助けになる一方で、仕事のアイデンティティを超えて、仕事以外の多くのコンテクストで実現される場合がある。自分自身を見つめるもう一つレンズにもなるだろう。

 さらに、価値観は「次は何をするか」を熟考する際に、自分のさまざまな可能性を探る基礎にもなりうる。

 たとえば、筆者はかつて投資銀行に勤めていた。そこでは顧客サービスという仕事を通じて、他者をサポートするという価値観を実現できた。また、最高経営幹部や同僚とともに働くことで、極めて有能な人々と協働するという価値観を具現化することができたのだ。

 筆者はいまもエグゼクティブコーチとして、こうした価値観を体現できている。さらに、リーダーシップ開発の専門会社を立ち上げて経営することで、かつては具現化できなかった冒険や独立といった価値観も、みずからの手で実現できるようになった。

 ●サポートを得る

 仕事を失ったことの意味を見出す方法を再検討する、すなわち有効性のある方法で自分の思考を検証するのは、一人では難しいかもしれない。仕事を失ったばかりで動揺したり、打ちのめされたりしている時にはなおさらだ。

 そうした時は熟練したコーチやセラピストの助けを得ると、自分自身の経験を検証し、経験から学び、それを活かして前に進む助けになる。

 このプロセスは、精神的にも知的にも中立な状態が必要になる場合が多いと、前述したトーコフは言う。中立の状態にいると、一歩下がってより客観的に自分を見つめ、「これは私にとって何を意味するのか」をみずからに問いかけることができる。

 セラピーは、自分は必要とされていない、あるいは無価値であるといった「自分自身について深く抱いている、ネガティブな感情を確認する状況を再現する」ため、仕事を失った人々にとって特に役立つだろうと、トーコフは説明する。

「他者の思考や分析、視点を取り入れることで、みずから新たなアイデアや視点を生み出す際のツールになる」。その過程で少しずつ、自分自身と仕事を失った経験を別の視点から見つめられるようになるのだ。

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 あなたは仕事に深くコミットして熱心に取り組むことで、そこに意義を見出し、肯定的な承認を得ることができる。しかしながら、私たちの存在は仕事以上のものだ。仕事を失ったからといって、あなたの存在意義まで失われるわけではない。


HBR.org原文:When You Lose Your Job - and It's Your Whole Identity, February 17, 2021.