●幅広い活動に力を注ぐ

 欧米文化は過度な仕事中心主義だが、それが仕事に対する過剰投資につながることがある。仕事のアイデンティティが強い場合、さらに仕事に入れ込む傾向があるからだ。

 サンフランシスコを拠点とする精神分析家のニール・トーコフ博士は、「仕事に過剰投資すると、人生の意義やパーパスを見つけられる可能性のある領域を犠牲にすることになる」と語る。たとえば、個人的な人間関係や趣味、ボランティアなどだ。

 幅広い活動に関与することで、生活が規則的になり、新たな人間関係を構築し、既存の人間関係を深め、これまでとは異なる部分に意義を見出し、究極的には自己認識とアイデンティティの定義を多様化する。

 エドゥアルドは仕事ができないために落ち着かず、もはや自分の価値を証明していた仕事で成果を上げられないことに不安に感じていたものの、まだ幼い子どもと一緒に遊び場で過ごす時間を増やすようにした。スローダウンして、目の前のいまに意識を置くことを学び、仕事のアイデンティティを超えてバランスの取れた自己認識をつくるようになったのだ。

 ●未来の自分を展望する

 私たちのアイデンティティは固定的なものではなく、時間とともに進化する。自分は10年前と変わっていないと言う人はほとんどいないだろう。にもかかわらず、現在のアイデンティティを永遠のアイデンティティだと考え、窮屈な型に自分を押し込み続けようとするバイアスが私たちにはある。

 自分が見つめる焦点からズームアウトして、「5~10年後にどのような人間になっていたいか」と自問する。未来の自分や、どのような人間になりたいかに意識を集中させることでナラティブ・アイデンティティ、すなわち自分はどのような人間かをみずからが語る物語が変化し始める。

 そうなれば、自分を現在の状態に押し込めていた固定マインドセットから解放され、みずからが望む方向に向かって自分の行動を変えることができる。反射的に行動するのではなく、先を見越した行動が取れるようになるのだ。どのような目標でもそうだが、自分の目標を他者に語ることで、実現の可能性が高まる。