●旧友に連絡を取る

 人間関係は、自分が何者であるかを思い出させてくれる。幼馴染みや大学時代の友人、あるいは最初に勤めた会社の友人など、人生やキャリアの初期に知り合い、いまも連絡を取っている友人と話をすると、自分を映し出すよい鏡を与えてくれることがある。

 こうした人たちは「その時代のあなた」を知っている。金融機関のエグゼクティブや経営コンサルタント、知的財産権専門の弁護士になる前のあなただ。彼らは、あなたが大きな仕事を成し遂げる前の生来の価値を理解している。

 彼らと話をすることで、自分には仕事以外のアイデンティティ、すなわち忠実な友人、思いやりのあるメンター、リスクテイカー、クリエイティブな思想家などの側面があることを思い出すきっかけになる。

 ●窮屈な思い込みに挑む

 アイデンティティや自己認識は、私たちの精神構造によって生み出される。自分が行き詰まったと感じるのは、単一の固定的な視点、多くの場合に非生産的な視点を通じて、自分自身をとらえているからであることが多い。

 筆者のクライアントであるエドゥアルドを例に挙げよう。彼は、自分のチームのメンバーが燃え尽き症候群に陥るまでプレッシャーをかけ続けために解雇された。筆者がコーチングを行ったところ、その行動の背後には「私の価値は何を生み出すかで決まる」という思い込みがあることがわかった。

 この思い込みが正しいかどうかを試すために、仕事とプライベートの両方で自分が尊敬している相手に連絡を取り、2つの質問をするように助言した。

 第1の質問は「私のどの部分に価値があるか。どの部分を素晴らしいと思うか」。これは、他者が評価する観点は自分自身のものとは異なる可能性が高いことを理解するのが目的だ。第2の質問は「あなたは個人として、どのようなことに価値を置いているか」。これは、さまざまな自己定義や自己評価の方法があることを示すのが目的である。

 筆者の予想通り、エドゥアルドが得た答えはどちらの質問に関しても、仕事あるいは自分や他の誰かが生み出したものとは関係がなかった。彼が耳にしたのは、「素晴らしい父親」「一緒にいると楽しい」「人の話を聞くのがうまい」「妻をサポートする夫」「いつも頼りにできる」「信頼できる」「よき友人」といった言葉だった。

 こうした会話によってエドゥアルドは、「私の価値は何を生み出すかで決まる」という窮屈な思い込みから抜け出し、個人としての自分の価値と仕事の成果を通じて得られる自己肯定感とを区別できるようになった。