ハーバードの教室から飛び出し
日本にどっぷり浸かって学ぶ

2021年3月に開かれたオンラインイベント「HBS Japan IXP/IFC Online Reunion」は、竹内教授がホスト役となり、青山ツリーハウスから生配信が行われた。

――日本のプログラムを立ち上げたHBS卒業生の1人が「東日本大震災を受けて何ができるか考えた時、ハーバードの文化と価値観から、ケースをつくることで後世にも伝えられると思った」と述べていたのが印象的でした。学生たちは日本で何を学ぶのでしょうか。

 このプログラムは単位認定されます。そのため評価をしなければなりません。評価軸は3つあります。1つ目がIntellectual Foundation(知的基礎)と呼んでいるものです。これは『知識創造企業』や『ワイズカンパニー』(共に野中郁次郎氏との共著、東洋経済新報社)で唱えた戦略のベースを教えるものです。

 そもそも、HBSの学生がまず叩き込まれるのは、マイケル・ポーターの競争戦略論です。経済環境を分析して、市場を分析して、業界を分析して、競合他社を分析して……と、ビッグデータを用いた分析の末に、自分の立ち位置を決めるという戦略です。我々はこれを「アウトサイド・イン」のアプローチと呼んでいます。

 ポーター的な考え方では、戦略とはデータから生まれることになります。果たしてそうでしょうか。「いや、戦略とは経営者のハートから生まれるものではないか」。我々はそう考えて、「インサイド・アウト」の戦略を提唱しています(インタビュー記事「共感と共生を戦略の中心に据えよ」を参照)。

 もちろん、アウトサイド・インの戦略が不必要というわけではなく、両方理解する必要があるのだと伝えています。特に、インサイド・アウトを世界で最も実行しているのが日本企業です。このコースではその本質を学びます。

 2つ目が、文化の理解です。来日したHBSの学生をまず連れて行くのが、明治神宮と浅草寺です。日本では、神道と仏教が同時に受け入れられていることを知ってもらいます。さらに、相撲の朝稽古や満員の通勤電車なども体験してもらい、日本文化や日本社会を肌で感じてもらうのです。

 特に、米国では「haveとhave-not」(持てる者と持たざる者)といわれるよう、格差が大きい。HBSの学生の多くはhave側にいたため、「(ブルーカラーである)工事現場の人がなぜあんなに楽しそうに仕事をしているのか」や「バスやタクシーの運転手がなぜあんなに礼儀正しいのか」といったことに気づくのです。そこから、HBSで教わる米国の考え方と日本社会との違いを理解します。

 そして最後の3つ目が、課題解決力です。企業や団体の課題を実際に解決するために、短い期間ですが、チームで提案をまとめてプレゼンテーションを行います。

 学生の年齢は平均27歳、28歳。もともとコンサルティングファームや企業で活躍していた学生も多いので、腕が鳴るのでしょう。それまでの経験や授業で学んだことを活かして、実社会の課題解決に挑むのです。

 最初の頃は、東北の地元企業に関わることが多かったのですが、IFCになってからは「アナログとデジタルの融合」というテーマに変わりました。近年ではヨウジヤマモトや積水ハウスなどの有力企業にもご協力いただいています。