『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』(DHBR)では毎月、さまざまな特集を実施しています。本稿では、最新号の特集テーマ「競争と協調」への理解をさらに深めていただけるよう、関連する過去の論文をご紹介します。

 DHBR2021年5月号の特集テーマは「競争と協調」である。

 長年のライバルと手を組み、協力関係を築く「コーペティション」(co-opetition)を実践することが、変化の激しい環境を生き抜くための最善の戦略になることがある。ライバルと競い合いながら、同時に手を取り合うことは、容易ではない。しかし、このジレンマを解消することは、現代の競争優位を築くためにますます重要になっている。

 2000年代、携帯電話のインターネット接続サービスの実現や音楽配信サービスを手がけ、auブランドを築いたKDDIの髙橋誠社長。その成功のカギは、多様なプレーヤーとの協調にあったという。時にライバルの力を借りて自社の弱みを補い、多様なプレーヤーと組んで新しい価値を創造する。

 時代が携帯電話(3G)からスマートフォン(4G)、そして5Gへと移る中でも、その本質は変わらない。髙橋氏へのインタビュー「利他の精神をもって持続的成長を実現する」では、KDDIの競争と協調の歩みを振り返りながら、これからの時代に必要な考え方が提示される。

 競争優位の確立や生き残りを目指す企業は、ライバルとの協調がその選択肢になる時がある。こうした動きは協調(cooperation)と競争(competition)の2語を組み合わせ「コーペティション」(co-opetition)と呼ばれ、今日では一般的に行われるようになった。

 協調の意思決定には、業界の競争の変化や自社の資産保護など、事前に十分な分析が必要となる。ニューヨーク大学スターンスクール・オブ・ビジネス教授のアダム・ブランデンバーガー氏とイェール大学経営大学院教授のバリー・ネイルバフ氏による「競争と協調のコーペティション経営を実践する法」では、ライバルと協調すべきかどうかを判断するための、実践的なフレームワークを提示する。

 ライバル企業と競争するだけでなく、お互いに得となるような協力関係を築く戦略は、一考の価値がある。しかし落とし穴も多い。そもそもライバル企業同士の協調は、談合・カルテルとして処罰されるリスクを伴う。そこで米国反トラスト法の違反事例をひも解きながら、合法的な協調戦略の可能性を探りたい。

 もう一つの落とし穴は、協力相手が将来強力なライバルに成長するリスクだ。この問題について豊富な示唆を与えてくれるのが、急速なイノベーションと首位交代が進んだ液晶パネル業界である。

「お家芸」であった液晶分野で、なぜ日本メーカーは韓国・台湾企業に敗れたのか。「競争と協調のジレンマ」では、産業経済学を専門とするイェール大学准教授の伊神満氏が、競争と協調の本質を明らかにする。

 自動車業界の中では規模の小さいSUBARU(スバル)は、市場では日本と米国への集中戦略を、製品では安全性と走行性能に注力した差別化戦略を取り、高収益を実現してきた。一方、自動車業界の100年に一度の大変革が本格化する中、トヨタ自動車との業務資本提携を強化した。

 2019年、同社からの出資受入比率を16.8%から20%へ引き上げ、スバルからトヨタへ0.3%出資する相互出資とした。「スバルらしさを貫くためにライバルと切磋琢磨する」では、その協調戦略の狙いや、大変革期の勝機をどこに見ているのかについて、中村知美社長に聞いた。

 スラック・テクノロジーズがセールスフォース・ドットコムに買収されたニュースは、多くの人を驚かせた。組織内のコミュニケーションツールを展開するスラックはなぜ、顧客関係管理(CRM)システムを提供するセールスフォースの傘下に入ることを決めたのか。

 その理由は、両社がともにマイクロソフトの脅威にさらされているという共通点を持ち、スラックがマイクロソフトに単独で立ち向かうことは困難になったからだと、筆者は指摘する。一方、ズームも同じくマイクロソフトを競合に持つが、自力で戦う道を選択している。

 ハーバード・ビジネス・スクール助教授のアンディ・ウー氏とハーバード・ビジネス・スクール准教授のスコット・デューク・コミナーズ氏による「競合と自力で戦うか、エコシステムで戦うか」では、ズームのように独立型のアプリケーションで勝負する「ベスト・オブ・ブリード戦略」と、スラックのように複数のアプリケーションから構成されるエコシステムに参加して戦う「インテグレーテッド・バンドル戦略」の概要を示し、テクノロジー企業がどちらの戦略を採用すべきか、その判断基準を明らかにする。