バブルからその崩壊へ

 ある手法が採用されるケースが増えるほど、より注目されて、正統性が強まり、さらに普及することが、複数の研究からわかっている。ただし、これは議論の余地がない手法についてだ。SPACや逆さ合併のように物議をかもしている場合はもう少し複雑で、その手法が広く使われるようになると第三者の懸念が高まり、懐疑論も増えていく。

 議論を呼んでいる手法が人気を集め、バブルになり、やがて崩壊するダイナミクスを、筆者らは制度的および社会学的に分析している。金融学と経済学では、意思決定者の認知バイアスがこうしたバブルを引き起こすと考えられてきた。しかし筆者らは、制度的なダイナミクスにも関係があることを指摘している。逆さ合併の人気そのものが、みずから終焉の種をまいていたのだ。

 筆者らは、逆さ合併の実施と市場の反応、市場価値や収益、総資産、負債、取引所上場など企業の特徴について、2001~12年のデータを収集した。また、逆さ合併をメディアがどのように評価しているかも調べた。2001~12年に掲載された記事267本のうち、148本が中立的、113本が否定的で、肯定的なものはわずか6本だった。さらに株式データを収集して、株式市場が逆さ合併をどのように評価しているかを検証した。

 これらのデータを分析したところ、予想通り、逆さ合併の人気が高い(すなわち、逆さ合併を採用した数が多い)ほど、最初は模倣され、さらに多く採用された。しかし同時に、逆さ合併の数が増えるにつれて、投資家やメディアは次第に懐疑的になっていく。こうした懐疑論や否定的な反応は、相対的に評判の低い企業が関与する逆さ合併の割合が増えるにつれて、さらに強まった。

 逆さ合併に対する株式市場の評価が低くなり、メディアで否定的に報道されると、評判のよい企業は逆さ合併を採用しなくなる。そこで、規制当局は適切な介入を行った。2005年に米国証券取引委員会(SEC)が逆さ合併の情報開示の規制を導入し、中国のプレーヤーが次々に流入する中で(筆者の別の論文を参照)2011年に投資家へ警鐘を鳴らしたことは、市場の否定的な反応を引き起こし、逆さ合併の減少へとつながった。

 要するに、金融イノベーションの重要な裁定者である投資家、規制当局、メディアが、互いに情報と評価を供給していたのだ。否定的な報道が株式市場の評価に影響を与え、それが逆さ合併の普及にブレーキをかけた。

 逆さ合併の件数がピークを迎えた2010年には、この現象に関する報道の70%が否定的なトーンだった。逆さ合併をした企業の株価は急落し、累積リターンはマイナス45%近くに達して、翌2011年には逆さ合併の件数が35%減少した。つまり、逆さ合併の人気が自滅の種をまいたというわけだ。

 議論を呼んでいる金融イノベーションが急速に普及して、質の低いプレーヤーや悪い評判、規制当局からの関心に悩まされる──どこかで聞いた話だと思うのは、SPACのバブルをめぐって似たようなダイナミクスが再び現れているからだ。