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仕事をしている時も「自分らしくありたい」と思うのはもっともだ。仕事で成功したり成長したりするには有意義な人間関係が欠かせず、そのためには本来の自分を出して相手と付き合うことが最善の方法だからだ。とはいえ、誰彼構わず、ただ自分をさらけ出せばよいというわけではない。相手を見極め、境界線を引きつつ、深い結びつきを築くにはどのようにすべきか。仕事生活と個人的生活を融合させ、豊かな人間関係を築くための方法を解説する。


「職場でも、ありのままの自分を出しなさい」。おそらく、初めて聞くアドバイスではないだろう。そして、これは理にかなっている。どの世界でも、仕事で成功して成長するには、有意義な人間関係を築くことが不可欠であり、自分らしくあることがその一番の方法だからだ。

 調査によれば、強固な社会的ネットワークを持つ人のほうが、仕事のパフォーマンスが高く、より大きな充実感を感じていて、寿命さえ長いという。

 しかし実際に、仕事環境でどのように本来の自分を出せばよいのか。どうするのが、賢明で持続可能な方法なのだろうか。

 出会う人すべてを信用し、何のフィルターもかけずに自分をさらけ出せば、すぐに破綻を来すに違いない。一方で、本当の自分を隠し、うわべだけで人と付き合えば、人生やキャリアを豊かにする人間関係を築く格好のチャンスを逃すことになるだろう。

 私は経営者として、この問題を幾度となく切り抜けてきた。その経験から、同僚や仕事仲間と築いてきた固い絆こそが、成功の原動力になったと言い切ることができる。

 どうすれば、消耗することなく、生産的だと思える方法でそうした人間関係を形成できるのか。私がこれまでのキャリアで学んできたことを、以下に紹介しよう。

「仕事用の顔」は存在しない

 仕事の会議に出席している時の自分は、友達と会っている時のようないつもの自分とは違うと、感じていないだろうか。それは理解できる。同僚や顧客を選ぶことはできないし、仕事の会議には一定のプロフェッショナリズムが求められる。

 だが、ネットワーキングや仕事でのやり取りを業務だと見なしている人は、深い結びつきを築く機会を逸している可能性が高い。そうした結びつきは、自分そのものでいなければ、築くことができないからだ。

 一例を挙げよう。私が最近参加した仕事のズーム会議で、参加者が天気について話していた。「そちらは晴れているのですか? こちらはどんより曇っています」。天気は話題として悪くない。誰もが経験するものだ。しかし、意義のある会話に発展する可能性は低い。

 私はその会議に参加すると、天気に個人的な経験を絡めて発言した。「私は雨が好きじゃないですね。このコロナ禍を乗り切れているのは、まさにウォーキングのおかげですから。9月から積算すると1200マイル(約2000キロ)近く歩いたでしょうか」

 このように私は、相手が会話を引き継げるように、具体的で隙のある話題を提供した。また、友人と一緒にいる時のように、一人の人間として話をしたのである。

 私は、これをやろうと思わなくてもできる。少なくとも、意識せずにできるようになった。仕事を通じて、日々練習することで、そのスキルを習得した。ほんの少し隙を見せたほうが、相手が安心することに気づいたからだ。

 自分の仕事上の知り合いと個人的な知り合いの間に境がないのは、そのためだ。ジムで会う友人がクライアントになったり、クライアントが友人としてディナーパーティに来るようになったりしている。

 あなた自身も、こうした練習をすることをお勧めしたい。出会う人すべてに、仕事相手ではなく、一人の人間として接するようにしてみよう。