これらの知見を踏まえ、最高データ責任者および企業のデータ担当リーダーは、以下に挙げる3つの現実的な助言を検討すべきである。

 第1に、明確に特定された、インパクトの高いビジネス課題や用途に向けてデータ施策を集中させると効果的だ。

 幹部は決定的に重要なビジネスニーズから始めれば、「クイック・ウィン(素早い成果)」によって取り組みの価値を早期に実証し、自社に認識させることができる。それがデータへの投資に対する信用の獲得につながり、その信用を基に、インパクトの高い用途をさらに見つけていけば、ビジネスに勢いをつけることができる。

 ビジネスニーズが明確に特定されないまま、データのケイパビリティと技術に投資して失敗する企業を、我々は何度も目にしてきた。

 第2に、自社のビジネス資産としてのデータについて、考え方を見直す必要がある。どの組織でも、データは川のように流れるものだ。その過程における多くのポイントで、データの入手から生成、消費、活用までを管理しなければならない。

 第3に、データドリブンになるためのビジネス変革は、忍耐と不屈の精神を要する長期的なプロセスだ。

 データのガバナンス、データリテラシー、データの価値とインパクトに対する意識向上プログラムなどへの投資は、正しい方向に向かううえで不可欠かもしれない。ただし組織に求められるのは、それらの取り組みが長期間に及ぶことを明示し、投資を継続して、結果がすぐに出なくても忍耐を失わず、努力を投げ出さないことである。

 昨年は明らかな後退があったとはいえ、企業が過去10年間で素晴らしい進歩を遂げてきたことは留意に値する。

 およそ10年前に本調査を開始した頃、大手企業はビッグデータとその革命的なインパクトの可能性を受け入れ始めたばかりであった。ビッグデータとAIは、当時は新興のケイパビリティであり、投資は最小限しか配分されなかった。正式な施策として立ち上げ、全社的な注力を表明した企業はごくわずかであり、最高データ責任者という役割は、ごく少数の企業を除いて存在しなかった。

 それから現在までの間に、最高データ責任者を指名したと回答した組織は2012年の12.0%から、2021年には65.0%まで増えた。興味深いことに、今年は幹部らの81.0%が、自社のデータとAIの将来について楽観的な見通しを持っていると答えている。ビッグデータがメインストリームに浸透しているのは間違いない。

 また、企業は洗練度を高めていくにつれ、自社が初期にはデータ変革のマイルストーンの達成度を過大に見込んでいたと認識するようになった。現在、10年にわたる投資を経て理解と洗練度を高めた多くの企業は、より自己批判的な視点を持っている。

 データとアナリティクスの競争に勝つためには、さらなる熟達が必要であることを彼らは心得ている。「十分に優秀」ではもはや十分ではない。データドリブンな競合によって、そのハードルは上がり続けているのだ。

 大手企業において、投資とデータリーダーシップの確立については進歩が見られた。とはいえ、大きな課題が残っていることも、今年の調査結果から示された。

 古いシステム、古い文化、そして場合によっては古いスキル群を抱え続ける大手企業で、データ変革の取り組みが効果を発揮するまでにどれほどの時間を要するか――この点が過小評価されている。

 データドリブンな組織には、一夜でなれるものではない。データ文化の構築とは一連のプロセスであり、その取り組みは時間をかけて展開されるものだ。ビッグデータとAIは今日のメインストリームとなったが、やるべきことはまだ多く残されている。


HBR.org原文:Why Is It So Hard to Become a Data-Driven Company? February 05, 2021.