HBR Staff/George Caswell/ artpartner-images/Getty Images

高尚な理想を掲げるリーダーが増えているが、実際には組織の非倫理的な行為を目にしても、その問題点を指摘できる倫理的なリーダーはそれほど多くない。なぜ組織の地位が高くなるほど、分別が失われてしまうのか。これは必ずしも個人の問題ではなく、組織に対する帰属意識が高まることに起因する。本稿では、非倫理的行為をとがめられなくなるメカニズムを明らかにし、この状況を改善するための3つの戦略を紹介する。


 近年、世界をよくする会社にすると誓うリーダーが相次いでいる。しかし、彼らがその理想を実現できないところを、私たちは何度も繰り返し目撃してきた。リーダーたちは自分の会社で倫理に反する行為が行われた時、なぜ実際には声を上げることができないのか。

 この疑問に答えるため、筆者はカリフォルニア大学バークレー校ハーススクール・オブ・ビジネス教授のキャメロン・アンダーソンとともに、カリフォルニア大学バークレー校で一連の調査を実施した。

 その結果、集団の中で高い地位に就くと帰属意識が強まり、集団の非倫理的行為に対する分別を失わせることがわかった。つまり、たとえリーダーが高い倫理観を持っていたとしても、組織内での地位が上がるほど声を上げなくなるのだ。

 最初の研究では、米国の22の政府機関の職員1万1000人以上を対象に、高い地位に就くことと非倫理的行為に対して声を上げにくくなることが関連しているかどうかを調べた。回答者には、組織内で異なる種類の非倫理的行為を目撃したかどうか、またその行為に対してどのように対応したかを匿名で答えてもらった。

 年齢、性別、勤続年数など、さまざまな変数を制御したところ、役職が上がるごとに声を上げる見込みが低下することがわかった。上級管理職は地位が最も低い職員に比べて、その割合が64%も低かった。

 次の研究では、この現象をより制御された環境で調査した。6人で構成された47のグループを研究室に招き、グループのメンバーが非倫理的行為に対して声を上げる機会をつくるための3つの実験を行った。

 まず、各グループはチャットのプラットフォームで基本的な個人情報を共有して、自己紹介をした。そして、リーダーシップに関するアンケートに回答し、その後、他のグループメンバーの回答とされるものを渡された(実際は事前に用意されたものだ)。

 次に、アンケートの回答に基づいたとされるランクが参加者に割り当てられた(実際にはランダムに割り当てられた)。参加者の3分の1には「グループ内で高いランクにある」と伝えられ、別の3分の1には「低いランクにある」と伝えられ、残りの3分の1には何のランクも与えらなかった。

 ランクを与えられた参加者には、ランクの高いメンバーは重要な決定を下し、グループのパフォーマンスを監督して、他のメンバーを評価し、各メンバーが参加に対して特別手当を受け取るべきかどうかを決定する責任を持つと伝えた。

 ランクが割り当てられた後、参加者にはグループへの帰属意識を測るためのアンケートに答えてもらった(「このグループのメンバーであることにどのくらい価値を感じるか」という質問や、「このグループの成功は私の成功だ」という言葉に、どの程度同意するかなどを聞いた)。

 最後に、簡単なゲームを用意した。各グループには嘘をつく機会が与えられ、嘘をつくと他のグループを犠牲にして自分たちの現金報酬を増やすことができた。参加者には、グループの仲間が嘘と真実のどちらを支持しているかを示すチャットメッセージを見せ、それに反対するか、あるいはグループに従うかを観察した。

 その結果、ランクは参加者が異を唱えるかどうかに大きな影響を与えた。グループが嘘をつくことを望んだ時、ランクの低い参加者の39%とランクが与えられていない参加者の38%が反対したのに対し、ランクの高い参加者は14%しか反対しなかった。

 逆に、グループが真実を話すことを望んだ時は、嘘をつくことを支持したのはランクの低い参加者は9%、ランクのない参加者は11%だったのに対し、ランクの高い参加者はわずか2%だった。

 このことは、ランクは嘘をつく、あるいは真実を伝えることの選好とは相関せず、単にグループに従うことの選好と相関していることを示唆している。