そもそも何のための
新規事業なのかを明確にする

 何のための新規事業で、どんなアプローチをし、いくら投資するか。純粋に収益を出すこともあれば、社内の活性化、若手や次期経営人材の登用など組織開発の観点での取組みもある。ゴール設定やアプローチは自ずと変わり、攻める領域やアプローチの仕方で不確実性の高さも変わる(図表2)。

 新規事業の展開には、投資領域の検討が必要だ。「コア事業の隣接領域のローリスク・ローリターンばかりやっているが収益目標は高い、あるいはリスクの高いところだけ攻めて手堅いところがなくて全滅している例もあります。不確実性による投資バランスを考える『インキュベーション戦略』の構築にも力を入れています」(北嶋氏)。

 たとえば中長期的な潜在需要に対しては、裁量の大きいトップダウン型や裁量を与えられたミドルマネジメントでなければ対応できないビジネスモデル変革を伴う事業開発を。また、短期的に現場のニーズを組み上げるボトムアップ型では現場の事業部が取り組む。

「こうしたことを勘案しながら、事業開発に適切なアプローチや投資配分バランスを決めるのがインキュベーション戦略。特に上流では、ビジョンに基づいた新規開発の策定や、投資配分を大事にしています」(北嶋氏)(図表3)。

 加えて、会社全体のポートフォリオの検討も欠かせない。「すでにグループ会社や他部署で類似の事業をやっていることもあります。会社としてどういう領域を狙うか、狙わないかも事前に一緒に検討します」(大丸氏)。

 創業から5年、折しもコロナ禍の影響で、積極的に新規事業に取り組む動きが高まってきている。(1)のインキュベーションテックと(2)の事業プロデュースを組み合わせて支援してきたが、さまざまな企業の新規事業創出に立ち会うなかで、新たな課題も見えてきた。

「実行する際の体制の問題が大きいことがわかってきました。新規事業をやりきるリーダーや人材がいない、誰がどの部署でやるべきか、高いレベルで新しい事業を運営するチームを社内でつくるのが難しい、事業化できたとしても、それをつくった企業自体で引き取る部署がない、その事業だけを元の事業から切り離して法人化させる『カーブアウト』の仕組みがフィットしないといったようなことです。事業運営主体として入り、リソースを含めて提供していかなければ、事業創出の加速が難しいということがわかってきました」(北嶋氏)。こういった課題に対応するため、(3)のオープンイノベーションの事業を始めた。

(3)は関わり方、事業のフェイズで3種類の支援方法がある。

 一つはインキュベーションパートナーだ。小森拓郎執行役員は、「新規事業の代行やアウトソーシングを請け負うもので、PoC(概念実証)・実証実験の代行や事業化を代わりに行います。良いアイデアでも、さまざまな制約があって自社では挑戦しづらいという例も多く、新規事業という切り口で、私たちがアセットやケイパビリティ(組織的能力)を提供して事業を検証したり、事業化したりします。オープンイノベーション事業のなかで件数が一番多いのがこの方法です」と言う。

 これまでに子ども向けのコーチング授業、オンラインの習い事、B to Bのビジネスマッチング、食品製造機の検証、リテールテック事業関連などの実績があり、さまざまな分野に利用が広がっているという。

 二つ目はさらに同社が深く関わる、共同事業やJVだ。長期的にアセットやケイパビリティを提供して役割分担や経済条件を詰めて協業する。

 レベニューシェアモデルで事業成長を目指す。当初は大企業が多かったが、近年はスタートアップとの協業も増えている。

 三つ目はスタートアップへの投資だ。クラウドファンディングで支援した先などへの経営支援や投資のほか、自社のラインアップを広げるための事業買収もある。