情報の喪失が信頼を脅かす

 予測可能性は、信頼の基盤である。誰かに利用されたり失望させられたりすることはないと信じられる理由がある場合にのみ、人は自分の弱みを見せる。つまり潜在的リスクに自分をさらすのである。これは、他者がどう行動するかを予測できると思える時にだけ、可能となる。

 本稿筆者の一人であるハイディ K. ガードナーは、シニアレベルの知識労働者3000人以上を対象に調査を行い、人々が一緒に効率よく働くために欠かせない特徴的な2種類の信頼を特定した。

 まず、人々は相手がきちんと責任を果たし、その仕事の質は高いと信じる必要がある(能力に関する信頼)。次に、相手が善意と高い誠実さを持っていると信じる必要がある(人間関係に関する信頼)。

 同僚をこの両面で信頼するには、明確で簡単に認識できるシグナルが必要である。すなわち、何をしているのか(行動)、なぜそうしているのか(動機)、それを今後も続けるかどうか(信頼性)である。

 こうした情報を得ることは、この20年間で難しくなった。リモートワークや動的に変化するチームへの流れがあったためだ。実際に顔を見て仕事をする時間が短くなることで、たとえば、会話をより効果的に前進させるために、チームメンバーが常に文書や図表を用意してくるかどうかを観察できる機会が減ってしまう。

 また、ちょっと脇で話をすることを通して、親密な関係や信頼関係を築くという機会も減った。たとえば、ピザの食べ残しがあれば、同僚が徹夜で仕事をしていたとわかるなど、状況証拠を目にする機会もなくなったため、他のメンバーの努力や成果を理解しにくくなる。他のメンバーが何をするのか推測するために必要なデータを得られないため、信頼感を築くことが困難になる。

 さらに、すでにあったはずの信頼関係を維持し、強化するのに役立つ情報が、絶え間なく入ってくることもなくなる。リモートワーク特有の孤独感も、他者を信頼しなくなる理由につながるかもしれない。物理的な接触がないことを、無意識のうちに信頼できないサインとして解釈してしまうためである。

 リモートワークでは、誤解やミスコミュニケーションが頻繁に起きる。その結果、信頼関係を築く土台となる情報の欠如、信頼の維持や強化のための情報の欠如、さらには信頼を破壊する「裏切り行為」の増加という最悪の事態に直面する。

 いったん失われた信頼を取り戻すことは、極めて難しい。従業員との信頼の回復、そして従業員同士の信頼の回復のために、リーダーが取るべきいくつかのステップと、避けるべきステップを以下に紹介しよう。