労働時間を減らすよりも付加価値を上げることがカギ

入山 ところで、多くの企業が取り組んでいる働き方改革や、それに付随する生産性の議論について、荻島さんはどのように見ているのですか。

荻島 ご存じのように、生産性とは労働投入量に対して、どれだけ付加価値が生み出されたのかを示すものです。

 いまの働き方改革に関する論議では、分母である労働投入量をいかに減らすかということばかりにスポットが当てられ、分子である付加価値をいかに増やすべきかという論議が置き去りにされているのではないかと感じています。

入山 つまり、残業時間をいかに減らすか、有給休暇の消化率をどう高めるかといったことに論議が集中し、肝心のアウトプットをいかに最大化させるかという視点が抜け落ちているということですね。では、分子を大きくするにはどうすればいいとお考えですか。

チームスピリット
代表取締役社長
荻島浩司
KOJI OGISHIMA
1996年有限会社デジタルコーストを設立。2010年クラウドで勤怠管理にSNSを組み合わせたサービスの開発・無料提供を開始。2012年「TeamSpirit」の正式サービスを始め、同年、社名を株式会社チームスピリットへ改称。2018年8月東証マザーズ上場。著書に『サブスクリプション・シフト』(翔泳社、2020年)。

荻島 労働時間を減らして生産性を上げようとするのは、あくまでも会社側の論理です。社員の立場からすれば、付加価値を高めるためには「何をするのにどれくらいの手間がかかるか」という工数がわかっているのに、時間の制約があるので、思いどおりの成果を上げられないというジレンマに陥ってしまいます。

 杓子定規に労働時間を短縮するのではなく、付加価値を生み出すためにはどれだけの工数と時間が必要なのかという視点で働き方を変えていく必要があると思います。

入山 日本のビジネスパーソンは真面目なので、時間が制約されると、その中で何とか成果を上げようと焦ってしまいそうですね。結果として、働くことの喜びや幸せを感じられなくなってしまう。

 過重労働やモチベーションの低下は、むしろ生産性を落としかねませんし、創造性を発揮する余地を奪ってしまうかもしれません。

荻島 TeamSpiritは勤怠管理と工数管理のデータが連携しているので、与えられた時間内に、どれだけの工数をこなしたのかということを可視化できます。これによって、過重労働の緩和や、付加価値を高めるために最低限必要な時間の把握と人材配置といったことが可能になるわけです。

入山 つまり、いままでは見えなかった分母の内訳の透明性を高めることができるということですね。昨今のようにリモートワークが一般化すると、誰がどれだけの時間働いているのかが見えにくいので、分母の透明性を高めることはますます重要になります。

荻島 会社は、社員に対して一律の働き方を押し付けてしまいがちですが、会社が求める生産性と、個人にとっての生産性は異なることを理解すべきだと思います。

 社員にとっての生産性は、アウトプットに必要な時間を、自分が納得できる形で投入することによって導き出されるはずです。