提供商品の簡素化で見落とされがちなのが、従業員の給料や仕事の質が向上し、企業にとっては従業員の離職率が下がることだ。サムズ・クラブでは、プロセスの簡略化や新技術の導入など、さまざまな改革の一環として商品を縮小したところ、従業員の生産性が向上し、例えば棚の補充作業が迅速かつ容易になった。

 生産性の向上は、賃金の引き上げにつながった。同社では、チームリーダーや精肉担当、ケーキデコレーターなど重要な役割を担う従業員の時給を、15ドル前後から5~7ドル引き上げた。

 簡略化によって仕事の予測可能性も高まり、サムズ・クラブは、現場の従業員にとって永遠の課題である一貫したスケジュールを提供できるようになった。こうした仕事の質の向上により、離職率が低下した。

 同社の元COOのデコナ・スミスは、MITスローンスクール・オブ・マネジメントの学生らにこう語った。「給料を上げるだけでは不十分だ。仕事を簡略化しなければならない」

 筆者らがともに仕事をした多くの企業幹部は、商品やプロモーションの数が多すぎることによる運営コストを認識している。「私たちはすべての人にすべてのものを提供しようとするが、それは戦略とは言えない」と、ある大手小売チェーンの幹部は述べた。

 実際、商品やプロモーションを増やすことは、短期的な売上目標を達成(しようと)するための手段であったり、オペレーション上の規律を失った結果であったりすることが多く、真の顧客ニーズに対応していない。しかし、企業は短期的な売上げの低下を恐れて、商品の簡素化を躊躇する。

 J.C.ペニーが2012年にクーポンを廃止し、「公正で正直な価格設定」という方針を導入した後、売上げが落ち込んだことを覚えている人もいるだろう。この戦略をより継続し(顧客に慣れてもらうため)、従業員への投資など他の改革を行っていれば、同社は2020年に破産申請をせずに済んだかもしれない。

 新型コロナウイルスが企業、従業員、顧客、投資家にとってすべてを覆す中、提供商品の簡素化に移行するのにこれほど適した時期はない。パンデミックに起因する不確実性を理由に、S&P500の半数以上が業績予想を取り下げるか引き下げ、新たな戦略を試すための柔軟性を確保している。

 顧客はいまや、簡素化された商品提供に慣れ、選択肢と安全性のトレードオフをよりよく理解し、評価している。米国の多くの州や市が最低賃金を引き上げたことで、企業は従業員の生産性と貢献度を向上させる必要性に迫られている。

 パンデミックは多くの小売店やレストランにとって過酷で、致命的でさえある。しかし、新しい顧客ニーズに適応し、実行力を高め、よい仕事を提供できる企業は、より強くなることができる。

 顧客が来店する理由を理解し、それを踏まえてすべてを簡略化することで、素晴らしいサービス、よい仕事、そして好業績を生み出すことが可能になる。勝利を収めるのは、こうした変化をいま起こすだけでなく、パンデミックが終息した後も、その変化を維持することができる企業だ。


HBR.org原文:Why Reducing Your Offerings Pays Off, January 28, 2021.