人間の脳の一部であるアーモンド大の扁桃体は、「闘争か逃走か」ホルモンを一日中分泌しているらしい。人間は、20万年に及ぶ進化の過程を経て、悪い情報や悲しい情報、論争の的になる情報に目を向けたくなるようにプログラムされている。それが果てしなく続いていく。

 高速道路で野次馬渋滞が起きるのも、星1つのレビューを探してしまうのも、数学の試験で間違えた1問を瞬時に見つけるのも、この生まれ持った性向のせいだ。

 扁桃体は、問題を探して見つけ出し、それを解決することに長けている一方、つけ込まれやすくもある。ニュースメディアやSNSは、酸いと甘いを組み合わせたあの手この手を使って、人の注意を最大限に集めようとする。

 だから私は、自分がネガティブなのは自分のせいではなく、世の中のせいだと考えることにした。

 だが、私はその世の中で生きている。そこでどうしたか。

 ある研究で、感謝の気持ちを書き留めている人と、大変だったことや大きな出来事を書き留めている人を比較していた。その結果によれば、感謝の気持ちを毎週書き留めることを10週間続ければ、人はいまより幸せになるだけでなく、肉体的にも健康になるとのことだった。

 そこで私は、インデックスカードの裏に、毎日それを書き加えるようにした。

「〇〇に感謝する」

 バイセップカールやレッグカールで、上腕二頭筋や太ももの裏側を鍛えている人はいるだろう。私は感謝を脳のトレーニングだと考えるようにした。

 大事な点は、かなり具体的に書かなければならないことだ。

「住んでいるアパート」「母」「仕事」などと、いくら書いても何も変わらない。「通りの向こう側のホステルに夕日が沈む様子」や「母が残り物のインド料理、マターパニールを持ってきてくれたこと」、あるいは「今日、アゴスティーノと一緒に、カフェテリアでランチを食べたこと」などと書くようにする。