「Oracle@Oracle」でオラクルは
 どう変革したのか

 社内システムを全て自社のSaaS製品で運用していることで、オラクルは成果を得られるようになった。それはSaaSシフトに成功したからではない。データモデルの統一から始めた結果、AIや機械学習から価値を引き出すことに成功したためだ。湊氏は分野ごとに例を挙げて紹介してくれた(図3)。

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図3:SaaSシフトで得た変革の成果

1. 決算の大幅なスピードアップ

 2021年度第3四半期の決算発表を米国では10日で完了した。S&P 500の平均である31日と比べるとかなり速い。また日本オラクルの決算は、米本社が締まってから作業をする関係で、それ以上の時間を要するがそれでも16日で完了した。東証の上場企業の平均が39.7日なので、こちらも平均よりずっと速い。この成果の裏側には、勘定科目ごとの銀行口座残高との照合(リコンサイルと呼ぶ)の自動化などが進んだことにある。現在の自動化水準は40%であるが、機械学習を用いて100%を目指して取り組みを継続中だという。

2.採用活動にかける時間を88%短縮

 オラクルでは一つのポストの募集を開始すると、平均25人の応募がある。応募書類の内容やLinkedInの情報を機械学習のモデルに学習させ、候補者スクリーニングを行うようにしたところ、面接するべき有力候補者を3人に絞り込むことができた。そのポストで過去に成功した人の特徴を学習させることで、採用面接にかかる時間を従来比で88%減らすことに成功した。

3.IoTで過剰在庫を7500万ドル削減

 オラクルは自社が扱うハードウェア製品の部品にセンサーを付けている。交換時期が近づくと、部品の在庫がどこにあるか、いつ交換を実施するか、どのフィールドサービスエンジニアを行かせるか、即座に計画を立てて顧客に連絡する。これまでは部品が故障してから連絡をもらってサービスを提供していたため、部品在庫を常に多めに確保しなくてはならなかった。自動化によってその必要がなくなり、過剰在庫の削減効果は7500万ドルにもなった。

 この他、営業/マーケティング分野では、マーケティングファネルのステージごとにAIが「Next Best Action(次に何をするべきか)」を提案させる取り組みを実験的に進めているという。これは、あるターゲット企業の誰にいつコンタクトを取ったか、既存の契約状況などを勘案し、担当営業が取るべきアクションを提示するものだ。もう一つ、事例紹介の自動化も試していると湊氏は明かす。オラクルは膨大な数の自社製品導入事例を集めたデータベースを運用しているが、「ウチの会社に会う事例は?」と聞かれたとき、検索キーワードをうまく選べなければ、ピンポイントでフィットする事例を見つけることが難しい。この悩みを解決するため、機械学習で「このお客様に今持って行くべき事例はこれ」とAIが提案してくれる実験を進めている。