だが、その目標を達成するには、データとインサイトが必要だった。そこで私は、3年を費やして一連の実験を行った。

 まず、バックグラウンドの異なる22~70歳の100人以上にインタビューを実施した。また、オーストラリアとニュージーランド、米国で数千人を対象にワークショップを開催し、私たちが「充実している」と定義する人生と対立するものとして、本当の充実を感じられる人生を送ることを妨げているものは何かを探った。

 こうした実験を通じて、いくつかの共通テーマが明らかになった。私が話を聞いた人たちの多くが、失敗への恐怖や不安定な経済状態、あるいは「まだ足りない」と他者から、あるいは自分自身から烙印を押されることに不安を抱いていた。充実した幸福な人生を妨げている最大の障害物は、注意散漫、恐怖、そして自分と他者と世界全般に対する好奇心不足のように見えた。

 さまざまな人の話を聞くうちに、もう一つ気づいたのは、ポジティブ感情だけでなく、ネガティブ感情も全面的に受け入れている人は、より幸せな人生を送れていることだった。ネガティブ感情に対処すると、自分にとって何が本当に大切なのかが見えてくる。これを「エモダイバーシティ(感情の多様性)」と呼ぶ心理学者もいる。多様な感情を等しく経験できる能力だ。

 最も充実した人生を送っていたのは、自分は常に幸せだと感じる必要がないことを学ぶとともに、人生の起伏を受け入れるだけでなく、その起伏に感謝するようになった人たちだった。このマインドセットと行動の変化により、不確実な未来を直視し、ポジティブ感情とネガティブ感情のどちらも受け入れて、みずからの意志と意義を持って環境に適応できていた。

 たとえば、私の母はきょうだいのビジネスに投資したせいで、60歳にして人生の貯えをすべて失った。しかも、その知らせは思いも寄らぬ、きょうだいの自殺という衝撃的な出来事の直後にやってきた。

 それでも、母がくじけることはなかった。悲嘆に暮れてはいながらも、感謝を忘れず、自分自身のために、自分の心の平穏のために、そして自分を頼りにする人たちのために精いっぱい生きることをみずから選択した。農家からヨガのインストラクターへとキャリアチェンジを図り、他者が内なる平和を見つけるのを助けるという決断を下したのである。

 シリーの例もある。彼女は若手の企業内弁護士で、起業の経験はまったくなかったが、仕事を辞めて、オーストラリア最大の女性起業家向けコワーキングスペースを立ち上げた。いまでは、女性が資金調達や事業構築のスキルを習得する支援をしている。