Matthias Clamer/Getty Images

あなたが何らかの意思決定を下す立場にいるのなら、素晴らしいストーリーを耳にしても鵜呑みにせず、立ち止まって精査したほういい。単なる結果論だったり、相関関係と因果関係が区別されていなかったりというケースが珍しくないからだ。本稿では、世の中で語られるストーリーによく見られる誤りについて、時間関連バイアスと選択バイアスの視点から分析する。


 ストーリーが強力なツールであることに疑いの余地はない。

 歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリは『サピエンス全史』の中で、ストーリーをつくる能力が、人類が協力して先例のない進歩を遂げ、最終的には世界を支配するのに役立ったと論じている。今日では、新製品の発表会やスタートアップのピッチ、人気のドキュメンタリー、TEDトークなどで人々の心をとらえるストーリーが登場しないことは考えられない。

 それには正当な理由がある。ストーリーには複数の利点があるのだ。

 ストーリーは複雑な事柄を理解し、アイデアを記憶し、他者とコミュニケーションを取り、未来を予測するのに役立つ。マネジャーや起業家がこうした利点を活用することは重要で、『ハーバード・ビジネス・レビュー』(HBR)はストーリーテリングのスキル向上のための幅広いコンテンツを提供している。

 しかし、ストーリーには強力で永続的な効果があるからこそ、意思決定者は誤解を招くストーリーの使われ方を認識することが不可欠だ。

 ナシム・タレブやタイラー・コーエンらは、ストーリーが不確実性を過小に表現し、因果関係の理解を歪めると、たびたび警告している。ヒラリー・オースティンはHBRのケーススタディの中で、ストーリーの魅力がビジネスにおいて偏った評価や取り返しのつかないミスにつながることを明らかにし、ジョナサン・ゴットシャルはセラノス事件の真相に言及した際、ストーリーが意思決定者の判断を誤らせたとを説いた。

 筆者らは著書The Myth of Experience(未訳)の中で、誤ったストーリーを書き、それを採用するほうが、無視するよりも簡単であることを論じている。特に重要な問題や意思決定に取り組む際には、「ストーリー懐疑論者」になることが大切だ。