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ビジネスの世界でもEI(感情的知性)の重要性は高まるばかりだ。しかし、この概念を提唱したダニエル・ゴールマンは、「EIが高い人は、いい人である」という間違った理解から、職場で多くのトラブルが起きていることを懸念する。EIの高いリーダーは、誰にでもいい顔をして、対立を避けるのとは違う。自己認識、自己管理、社会性、人間関係管理という4つの領域で、正しく力を発揮することが必要とされるものだ。本来、有用なはずのこのフレームワークがなぜ誤解されるのかをひも解き、リーダーみずからEIを高めるための指針を示す。


 筆者の著書『EQ こころの知能指数』が刊行されて25年が経つが、相変わらず、EI(感情的知性)が高いことを「いい人であること(nice)」だと間違って理解している人が多い。だが、そうではない。これを誤解するとトラブルに陥ることになる。

 誰かが同僚のことを「いい人だよ」と言ったら、それはたいてい「一緒に働きやすい人」という意味に受け止められるだろう。だがそれは、小さな問題を見えにくくする可能性がある。たとえば、その人が「誰に対していい人なのか」という問題だ。

 筆者の知り合いに、魅力的で礼儀正しく、相手を喜ばせることが大好きなマネジャーがいる。ただしそれは、相手がクライアントか上司である場合だ。

 このマネジャーが、彼らにとっていい人なのは間違いない。しかし、彼女と仕事をしたことがある人たちによると、直属の部下にとっては有害な職場をつくっていたらしい。彼女は恐ろしく批判的で、よそよそしく、相手をすり減らすと言うのだ。EIを高めようとする時には、相手が上司であれ部下であれ、あらゆる人間関係が重要になる。

 対照的に、特に競争的な職場環境では、「いい人」であることは対立を避けようとしていると解釈されるため、簡単に利用されやすい。都合よく使われたり、感情を傷つけられたりすることになるなら、EIを高めたいなどと誰が思うだろう。あるいは、あなたが能力開発の責任者だったら、「いい人」から成る組織をつくりたいなどと思うだろうか。「強い人」から成る会社をつくりたいのではないか。

 実のところ、EIを構成する4つの領域のそれぞれを高めれば、必要な時は対立もできるし、より戦略的かつ生産的に問題に向き合うこともできる。以前の論稿でも記したように、この4つの領域とは、自己認識、自己管理、社会性、そして人間関係管理を指す(いずれも「いい人であること」と合致しないことがわかるだろう)。