交渉術を適用する

 ●問題を避けてはいけない

 ちょっとした落胆やいら立ちを感じるたびに対応しよう。問題を放置すると肥大化し、感情の抑圧が強まるからだ。パートナーのキーボードを叩く音がうるさくて仕事に集中できない時には、キーボードを壊しに行く前に、キーボードを叩く音について話をする。

 苦境に遭遇した時、深刻さの大小にかかわりなく、それを変化の機会ととらえられる人は、より幸福で健康である。苦境に遭遇した瞬間を、互いのニーズを話し合い、理解を深める機会としてリフレーミングできるカップルは、その関係を強化できる。

 ●家庭で生じる利害を理解する

 相手の要望を受け入れると、うまくいっているような幻想をつくり出すが、そうすることが有益なのは、自分にとってその結果どうなるかがあまり重要ではない場合か、関係維持が極めて重要な場合のみである。

 家庭の問題がもたらす利害は、一見すると些細なことに感じることが多い。誰がゴミを出すか、食洗器から食器を出すか、犬の散歩をするかといったことは、1日ごとに見ると大きな問題ではないと思えるかもしれない。

 しかし、2人とも疲れていて仕事する時間がもっと必要な時に、火急の家事を片付けることを優先していると、遅かれ早かれ、何かが破綻する。自己の利害を度外視すれば短期的にはうまくいくかもしれないが、そのせいで憤りが胸の中でくすぶり続ける。そして、仕事の業績や子どもたちと過ごす時間の質、メンタルヘルスにも波及し、いずれも侮りがたい悪影響が生じる。

 相手の要望を受け入れる代わりに、自分にとって何が重要なのか時間をかけて説明し、公平な解決策を一緒に見出すようパートナーを促すべきである。

 ●非難したくなるのを我慢する

 批判や非難は対立をさらに強め、論争をさらに激しくする。対立が激化して、過去の失敗や不公平だった出来事を細々と指摘したくなる衝動に駆られても、我慢しよう。

 2人のうちのどちらがより多く家事をこなし、子どもの世話で大きな負担を引き受け、有給の仕事や気分転換のための自分時間を確保したかをいまさら持ち出したところで、何も解決しない。そうではなく、2人の関係を中心に据えた関係的思考(relational thinking)を駆使し、話の焦点を非難ではなく問題の解決に向けるとよい。

 身勝手な行動は非難したくなるものだし、そうすればすっきりするかもしれないが、より効果的なのは自分が何を必要としているかについて説明することである。

 現在の我々を取り巻く環境では、不安を感じざるをえないことを認識し、一見すると自己中心的なパートナーの行動の裏にあるポジティブな理由を探し、2人の関係に対するコミットメントを確認する。そうすることで、対立を解決すべきタスク、すなわち2人で一緒に克服するものとして、別の視点から考えられるようになる。