Illustration by Tracy Walker

あなたの主張を他人に受け入れてもらいたければ、その人物をよく知ることが大きな価値を持つ。その人の思考や判断の基準を理解することで、相手が望むスタイルでメッセージを発信できるからだ。論理的な話を好む人に、情緒的な主張を展開しても響かない。本稿では、「言語的ミラーリング」の有効性を示し、それを効果的に実践する4つのポイントを紹介する。


 大口顧客に売り込みをするにせよ、自社の幹部にプレゼンテーションをするにせよ、裁判官を説得するにせよ、あなたの主張に評価を下す人物との間に強力な関係を築けていれば、説得がうまくいく可能性が大幅に高まる。

 なぜ、そのようなことが起きるのか。筆者らが最近行った研究によると(『アドミニストラティブ・サイエンス・クォータリー』誌に掲載)、すでに相手との人間関係があれば、その人物がどのように思考し、判断を下し、物事を解釈し、データを分析するかを理解しやすい。その結果、筆者らが言う「言語的ミラーリング」を実践して、その相手に合わせたメッセージを発信できる。

 たとえば、相手が直線的・論理的思考に基づくコミュニケーションを好む場合は、その人物を説得する際もファクトを重視した主張を展開したほうが成功しやすい。それに対し、ストーリーを用い、堅苦しくないコミュニケーション・スタイルを好む人物に対しては、ストーリーを語ったほうがうまくいく。

 相手が実践しているコミュニケーション・スタイルを鏡映しのように真似する(ミラーリング)と、その相手はあなたの主張にいっそう説得力を感じる可能性が高い。したがって、自分の主張に評価を下す人物を知っておくことは、説得のプロセスで大きな強みになる。

 筆者らはこの点を検討するために、弁護士がどのようにして裁判官に影響を及ぼすのかを調べた。具体的には、特許権侵害訴訟で原告側代理人を務める弁護士の行動に着目した。

 我々は裁判を直接観察したほか、法廷弁護士、企業内弁護士、連邦裁判所の裁判官、裁判所事務官などに50件を超す半構造化インタビュー調査を行い、1000件以上の特許権侵害訴訟の公開データを定量分析した。

 その結果、一貫して見えてきたのは、裁判官をもともと知っていた弁護士は、そうでない弁護士に比べて、言語的ミラーリングを多く実践していて、裁判に勝利する確率も高かった(人間関係そのものが及ぼす影響は取り除いて分析した)。

 筆者らの研究によれば、そのような弁護士たちは、担当の裁判官がデータと情緒的アピールのどちらに影響されやすいか、自信満々の態度と曖昧さを残した主張のどちらに好印象を抱くか、語り手が私的なことがらを打ち明けることにどれくらい価値を見出すかをよく理解していた。

 担当裁判官のことをよく知っているので、どのようなアプローチが有効かを判断し、それに合わせたコミュニケーション・スタイルを採用しやすい。たとえば、筆者らの聞き取り調査に対して、ある経験豊富な法廷弁護士は、相手方に追加資料を提出させるよう裁判官を説得するうえで、言語的ミラーリングがきわめて重要だと語っている。

「一つのアプローチとしては、こうした主張を展開する選択肢があります。『私はこのような資料を要求しました。それに対して、相手方が提出したものがこれです。私には、その不足分を埋めるよう求める権利があります』。きわめて論理的で直接的な主張です。
 一方、このようなアプローチもありえます。『聞いてください。私たちは正義の騎士です。長い戦いの間、先方は盗んだり、嘘をついたりすることを繰り返してきました。善良な人たちとは言えません』。裁判官に対して、自分を善玉として印象づけようというわけです。裁判官に書類を提出するたびに、弁護士が自分を善玉として描くのです。
 このようなスタイルを好む裁判官もいますが、プロフェッショナルらしくない言動と見なす裁判官もいます。『悪口ばかりだ』と思われてしまうのです」