ジョージアの例

 具体例として、上記の条件をすべて備えているターゲット州の一つ、ジョージアについて考えてみよう。より具体的には、同州最大の都市であり、最も多くのチャンスが集まっている、中心地のアトランタである。

 アトランタは多くの好ましい特性によって、伝統的なマイノリティ・コミュニティに属する人材の宝庫となっている。ハイテク業界の就業者数は全米第10位で、黒人によるハイテクビジネス起業の中心地だ。

 主要学術拠点の集積地を擁し、ジョージア工科大学やエモリー大学に加え、モアハウス大学とスペルマン大学がある。この2校は超一流の伝統的黒人大学(HBCU)であり、マイノリティ・コミュニティへの教育で多大な貢献をしてきた。アトランタにはまた、ハイテクイノベーションの中心地であるテック・スクエア地区がある。

 伝統的黒人大学は、アトランタのネットワークにおける強力な結節点だ。同地域でSTEM系の黒人大卒者が圧倒的に多い理由であり、1995~2004年に米国でSTEM学位を取得した全黒人女性のほぼ半分を輩出している。モアハウス大学は、モメンタム・アット・モアハウスというプログラミング研修も運営している。

 しかしながら、ハイテク企業はいまだに伝統的黒人大学からあまり多く採用していない。市内のほかの学校はすでにハイテク業界の注目対象であり、たとえばジョージア工科大学は黒人の工学専攻者の数で全米5位に入っている。

 アトランタのようなホットスポットで新規採用者を見つけ、リモートやサテライトオフィス、または地元コミュニティにおけるハイテク集積地の一員として勤務させれば、人材の採用と維持を強化する循環が生まれる。すると間違いなく、ダイバーシティの欠如を改善して、コミットメント(約束)を実行しようというモチベーションが高まるはずだ。

 ハイテク業界の求人市場は競争が激しく、恒久的な人材不足に直面している。ハイテク企業はリベラルに偏る傾向があるが、もっと多様でインクルーシブな社員構成を促進する環境をつくるべきだ。加えて、ハイテク株が高騰し、業界が総じて好調なおかげで――特にコロナ禍でのデジタル活動の急増も相まって――ハイテク企業は不均衡なほど多くのリソースを持っている。

 業界の新たな切迫感を踏まえ、グーグルのサンダー・ピチャイCEOは「当社の黒人系コミュニティのために持続的な公平性を築く」ことを目的に、5つの有意義な取り組みを約束した。その一つに、リーダー層におけるマイノリティの割合を2025年までに30%増やすという目標もある。

 いまや司法省がグーグルを反トラスト法違反で提訴するという重大事が迫り、ほかにも複数の訴訟が同社を含む数社に対して検討されている中、過去に掲げたすべての約束を――従業員のダイバーシティ促進も含め――果たすことへの圧力は高まる一方だ。

 我々の分析で特定されたターゲット州は、カリフォルニアのグーグルプレックス(グーグル本社)から遠く離れている。これらの地はピチャイおよび業界の同業者らに、社員構成――自分たちの会社、製品、文化を象徴する要素――の改善という約束を実行するチャンスをもたらすのだ。

 コロナ禍によって、社会的不公正を再認識する環境と、この問題に対処する必要性が生まれたといえる。だが同時に、それに対して何らかの有意義な行動を起こす環境も整ったのかもしれない。

分析方法

「ハイテク人材多様性」指数の算出にあたっては、STEMまたはSTEM関連の学位取得者を「ハイテク業界に適した人材」の代理変数として適用。各州内のすべての黒人、ラテンアメリカ系、女性の学生のうち、これらの学位取得を目指している黒人、ラテンアメリカ系、女性の学生の割合を算出した。データは2018年の米国勢調査局のものを用いた。

「デジタル・レディネス」指数の算出は、次の2つの指標を組み合わせた。1つ目の「在宅勤務の準備態勢」指数は、自宅でのIT機器へのアクセス、リモートワークが可能な従業員の割合の推計、情報サービス産業の規模などから算出した。

 2つ目の「インクルーシブ・インターネットおよびデジタル公共サービス」指数は、手頃な価格でのインターネットへのアクセスが可能か、コロナ禍の中で州が公共サービスにテクノロジーをどれほど活用しているかなどを測定して算出した。


筆者注:我々の研究チームには、デビアニ・シン、クリスティーナ・フィリポビッチ、ズオ・ジョイ・チャンが参加した。

HBR編注:ランキングや指標はすべて、特定の手法やデータセットに基づいて企業や地域を分析し比較する一手段にすぎない。HBRでは、うまくつくられた指標からは有益な知見が得られると考えているが、定義上は、より大きな全体像の一部分を切り取っているだけである。HBRとしては、手法に注意深く目を通すことを常に奨励している。


HBR.org原文:To Increase Diversity, U.S. Tech Companies Need to Follow the Talent, December, 04, 2020.