南アフリカで生まれた生命保険の新しいスタイル

高田幸徳(たかだ ゆきのり)
住友生命保険 執行役常務
(2021年4月より代表執行役社長に就任予定)

1988年に京都大学経済学部を卒業し、住友生命保険に入社。 勤労部門、営業部門にて個人保険販売に関する企画業務に従事。2011年から営業企画部長、2013年から企画部長として「スミセイ中期経営計画」を取りまとめ、計画に掲げた諸目標の達成に尽力する傍ら、他生保との提携、格付の向上、FinTech研究の取りまとめを行う。 現在、Vitality戦略および、営業企画・宣伝広告・CX(Customer Experience)向上を担当する執行役として、営業職員チャネルの強化や契約者フォロー体制の強化に取り組むとともに、Vitalityの日本での普及に尽力。

石川 生活習慣病の予防には、バランスの取れた食事、適度な運動、そして心身のリラックスが大切であることは、誰もが分かっているはずです。しかし、健康を維持し、増進するための行動を継続するのは並大抵のことではありません。人々に生活習慣を変えてもらうためには、ドラスチックな意識改革も必要になると思います。生命保険会社として、どのようなサポートができるのでしょうか。

高田 Well-beingのキーワードである「健康」を維持するために、2018年に日本に導入したのが健康増進型保険“住友生命「Vitality」”です。

 従来の生命保険は、加入時の健康状態で保険料を決定し、病気などのリスクに備えるというのが役割でした。一方、“住友生命「Vitality」”は従来の生命保険の機能に加えて、健康診断や日々の運動など、加入者の継続的な健康増進活動への取り組みをポイント化して、保険料の変動や特典(リワード)を受けられる仕組みになっています。生命保険と健康増進プログラムをセットにすることにより、リスクそのものを減少させることを目的とした新しいスタイルの生命保険です。

 商品の歴史は意外に古く、20年前に南アフリカのディスカバリー社が開発し、米国、英国、ドイツ、フランス、中国など、世界24の国と地域で販売されています。すでに世界では2000万人もの会員数がおり、日本でも約54万件のご契約を頂いています(2020年11月現在)。

石川 なるほど。従来の保険の機能に加えて、行動変容を促す仕組みや仕掛けをセットにすることで、よりよく生きることをサポートする、という取り組みですね。しかし、超高齢社会において、Well-beingを実現するビジネスモデルのヒントが、南アフリカの会社にあったというのは、大変興味深いですね。

高田 ご存じの通り、南アフリカでは約30年前にアパルトヘイト政策が撤廃されて民主化が進み始めたわけですが、当時の平均寿命は60歳程度でした。人口構成比で60代、70代が非常に少ないだけでなく、若くして亡くなる人も多い。言うまでもなく、その背景には医療資源の不足や、十分な医療費を捻出できない貧困層の存在などの要因がありました。

 こうした現実を前にディスカバリー社が考えたのは、病気になる前の段階で、保険会社としてもっと取り組めることはないかということでした。

 そうした流れからVitalityは生まれました。現在、南アフリカの平均寿命は約64歳となっておりますが、Vitalityゴールドステータス以上の加入者の平均寿命は80歳以上と、狙い通り、大きな成果を上げています。

石川 なるほど。南アフリカでは、社会的環境からそもそも「生」をビジネスドメインとする保険会社が求められていた、ということですね。しかも平均寿命が約16年も延びたのは、素晴らしい成果です。2018年にVitalityは日本でも導入が始まったということですが、具体的な変化は表れていますか。

高田 注目すべきは、日本でも加入者の方々の健康状態やヘルスデータなどに変化が見られることです。例えば、日本のVitality会員の活動データおよびアンケート調査によれば、加入前より健康を意識するようになった方が93%に上り、1日当たりの歩数が増えるなど行動が変化した方が17%増、血圧が高めだった方のうち血圧が10mmHg以上下がった方が48%。そして、生活の質が高まったと感じている方が84%というように、実際に結果が数値として出ています。

 生命保険に加入した結果、生活の質が向上したというような声は、これまであまり聞いたことがありません。健康増進に大変効果があると、手応えを感じています。