●本人に対する期待を明確にする

 筆者のクライアントであるNGOでは、職場として雰囲気がよく、スタッフの間には互いのニーズを理解し合おうとする文化があった。ところが理事長は、あるバイスプレジデント(VP)がきちんと結果を出さないことにいら立っていた。ただし、当の本人は「自分はこんなに努力しているのだから、よくやっている」と思い込んでいた。

 理事長は、そのVPの上司であるシニアエグゼクティブに、確実に結果を出せるようにするのは彼の責任だと念を押した。シニアエグゼクティブは、VPと一緒に業績目標を再確認したものの、本人を非難したり、彼女の気持ちを傷つけたりしたくなかった。そのため、彼女の仕事が組織全体の業績を損なう原因になっていることや、このままでは彼女が更迭される可能性があることは説明しなかった。

 上司のVPに対する信頼は低下し続け、最終的には本人の担当業務を減らして「十分な改善が見られない」ことを間接的に伝えることにした。後になって、理事長もシニアエグゼクティブも、VPの仕事振りについて直接的な話し合いが足りなかったことを認めた。

 ●リソースとサポートを提供する

 ほとんどの場合、従業員の能力開発にはリーダーやメンター、あるいは強力なスーパーバイザーが必要だ。その従業員が、その会社で初めて設けられた職務を担当する場合、あるいは空席を埋めるために昇進した場合は特にそうだ。新しい職務を果たすのに必要なスキルが不足している場合には、自分の力不足にさえ気づかない可能性がある。

 あるクライアント企業は、エグゼクティブディレクターが突然退職したため、2段階下のポジションにいたディレクターを昇進させた。彼はいきなり、さまざまな職務に就いている大勢のスタッフを管理しなければならなくなったのだ。しかし、上層部は誰も、新たな能力開発の必要があることを認識しなかった。

 本人は、自分がよくやっていると思っていた。2段階昇進したのだから、無理もない。だが、以前のポジションと同じ方法ではとても管理できない複雑な業務だったにもかかわらず、彼は燃え尽き症候群(バーンアウト)を引き起こすマイクロマネジメントを展開し、オペレーションを大きく滞らせ、部下の間に大きな不満を招いた。