傑出している企業は、社員のエンゲージメントを高め、やる気を喚起する方法を見出している

 従業員エンゲージメントとやる気は重要だ。

 筆者らの研究によれば、エンゲージメントの高い社員は、単に満足して働いているだけの社員に比べて、生産性が45%高い。やる気の高い社員(仕事と会社の両方、もしくは片方との深い個人的結びつきを感じている社員)は、エンゲージメントの高い社員に比べて生産性が55%高く、単に満足して働いているだけの社員に比べて生産性が2倍以上も高い。

 つまり、社員のエンゲージメントとやる気を高めることに長けた企業ほど、業績もよくなるのだ。

 生産性を左右する3つの要素のうち、新型コロナウイルスの感染拡大で最も激しい打撃を受けたのは、社員の意欲だった。アーカイバーズ・ワークフォース・インスティテュートの調査によると、ほとんどの企業は、コロナ禍で社員のエンゲージメントを保つことに苦労していた。そうであれば当然のこと、ほとんどの企業では、生産性も大幅に落ち込んだ可能性が高い。

 ただし、前述したように、すべての企業で社員の意欲が減退したわけではなかった。たとえば、アドビの上層部が筆者らに語ったところによれば、同社ではコロナ禍を通して社員のエンゲージメントを保てているという。同社はいち早く、コロナ禍で解雇を行わない方針を表明し、社員の不安をやわらげ、社員を守り抜く強い姿勢を示した。

 また、在宅勤務に移行して間もない2020年3月、アドビの上級幹部たちは、バーチャル社員集会を開催して、自宅で働いている社員たちとの意見交換を始めた。それにより、新型コロナウイルス感染症の状況と自社の対応について社員に知らせるようにした。

 その後ほどなく、「テイク・ファイブ」と銘打った動画シリーズも毎週公開し始めた。社員が新型コロナウイルスに関する重要な情報と事業に関する最新情報を社員に提供することが目的だ。この動画シリーズでは、同僚社員からのちょっとしたアドバイスも紹介する(たとえば、社員食堂の料理人がありあわせの缶詰食材で素晴らしい料理をつくる方法をアドバイスした)。

 新型コロナウイルスの感染拡大が収まらず、在宅勤務が続く中で、定期の状況確認を通じて見えてきたのは、新しい環境で仕事と家庭を両立させることに社員が疲れ始めているということだった。

 この発見を受けて、アドビは全社員に1日の休暇を追加で与えた(毎月第3金曜日を休みにした)。リラックスして、英気を養うための時間にしてほしいと考えたのだ。

 これらの取り組みやそのほかの措置を通じて、アドビはコロナ禍で社員の意欲を引き出すことができた。実際、アドビによれば、同社のエンゲージメント・スコアは、コロナ禍が始まって以降、むしろ上昇しているという。

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 新型コロナウイルスの感染拡大が始まって以降、傑出している企業とその他大勢の企業の生産性ギャップは拡大している。

 筆者らの推計によれば、傑出している企業(社員の時間と才能と意欲をすでに有効にマネジメントできている会社)は、過去1年の間に生産性を5~8%向上させた。これらの企業では、社員が仕事に費やす時間が増加し、新しい優秀な人材を活用できるようになり、社員のエンゲージメントを維持できていることにより、生産性が高まったのだ。

 しかし、ほとんどの企業は、生産性が3~6%(あるいはそれ以上)減少した。これは、効率的なコラボレーションができておらず、無駄の多い働き方が続き、従業員エンゲージメントが全般的に低下したためだ。

 このように生産性の格差が拡大していることの影響は大きい。前述のように、コロナ禍以前の時点で、傑出している企業は、その他大勢の企業より40%生産性が高かった(筆者らが2017年に行った調査に基づくデータ)。現在は、この格差が50%以上に拡大している可能性がある。

 コロナ禍でますます生産性を高めた企業は、今後長きにわたり、チームの質とイノベーションでライバルを凌駕し、ライバルよりも目覚ましい成長を遂げ、大きな成果を上げるだろう。


HBR.org原文:The Pandemic Is Widening a Corporate Productivity Gap, December 01, 2020.