傑出している企業は、社員の時間を無駄にせず、仕事に集中できるようにしている

 コロナ禍以前に、すでに有効なコラボレーションを通じて生産性の高い働き方を実践できていた企業は、ロックダウンなどの混乱の中でも高い生産性を維持できている。在宅勤務により、それまで通勤に割いていた時間が不要になり、勤務スケジュールの柔軟性も高まった。それに伴い、多くの社員は仕事に割ける時間が増えた。

 ラファエラ・サドゥン、ジェフリー・ポルザーらによる最近の研究では、世界の16都市で働く310万人を対象に、メールと会議に関する調査と分析を行った。それによると、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった初期のロックダウン期間中、勤務日の平均労働時間は48.5分伸びたという。

 きわめて生産性の高い企業では、社員が新しいテクノロジーを活用して、コロナ禍の間も顧客や同僚と連絡を取っていた。筆者らの推計によると、傑出している企業では、コロナ禍の中で社員が生産的活動に携わる時間が5%以上増えた。

 一方、コロナ禍以前に生産的なコラボレーションを実践することに苦労していた企業では、在宅勤務への移行により、状況がいっそう悪化した。まず、バーチャル会議に費やす時間が大幅に増加した。

 ハーバード・ビジネス・スクールとニューヨーク大学の研究者が行った研究によれば、コロナ禍の中で会議の件数は平均12.9%増加し、一つの会議への参加者数は平均13.5%増加したという。その結果、1件の会議に要する時間は平均すると短くなったが、会議に費やされる時間の合計は大幅に増えた。

 残念ながら、大半の企業では、このように会議に費やす時間を増やすという形での投資はほとんど成果を生まなかった。このハーバード・ビジネス・スクールとニューヨーク大学の研究結果は、筆者らが多くの企業で目の当たりにしてきた現実と合致している。ほとんどの企業では、お粗末なコラボレーションと働き方の効率の悪さにより、生産的な活動に費やされる時間は2~3%減少してしまった。

傑出している企業は、働き方を変えることにより、違いを生み出せる社員の才能を活用できるようにしている

 創造性を持つ卓越した人材は、きわめて価値ある希少資源だ。傑出している企業は、そのような人材を採用し、育成し、チームとして行動させ、導くことに長けている。筆者らの研究によれば、この強みにより、傑出した企業の生産性がそれ以外の企業よりも20%押し上げられている。

 コロナ禍は、生産性の源としての人材に対して、好ましい影響と悪い影響の両方を及ぼした。

 リモートワークの導入により、企業は、コロナ禍以前には縁がなかったような人材にアクセスすることが可能になった。ほとんどの企業では、職場の近くに住んでいることは、ある人が自社の潜在的な働き手候補になるための主たる要因ではなくなったのだ。

 ソフトウェア開発やビッグデータ分析の仕事は、アイオワ州シダーラピッズに住んでいようと、カリフォルニア州サンノゼに住んでいようと、同等のレベルで行うことができる。傑出している企業は、それまで自社にいなかったタイプの人材を活用し、未来に成功を手にするために必要な能力を築いているのである。

 リモートワークのもう一つの恩恵は、社内屈指の優秀な社員たちが、それまでより多くの活動やチームに参加できるようになったことだ。これはバーチャルな働き方が可能になり、すべての活動に物理的に参加する必要がなくなったことの効果である。

 これにより、優秀な社員が会社の業績に及ぼせる影響が大幅に高まった。筆者らの推計によれば、傑出している企業は、コロナ禍により生産性が少し向上した可能性がある。

 しかし、大半の企業は、コロナ禍で現状を維持することに苦労してきた。そのような企業は、自社の製品やサービスへの需要が底を突き、労働市場に参加できなくなり、新しい人材を獲得するチャンスを活かせずにいる。

 一方、既存の社員は仕事と家庭の両立に悪戦苦闘し、その重圧に苦しんでいる。一部の企業では、(少なくとも一時的に)離脱するスター社員が続出し、生産性が落ち込んでいる。筆者らの推計によれば、ほとんどの企業は、コロナ禍により、トップレベルの人材を引きつけ、つなぎとめ、マネジメントする能力が少し低下し、それに伴って生産性も若干落ち込んだ。