●他人に投資する

 次の実験を自分で試してみてほしい。10ドル札あるいは20ドル札を今日、他人のために使うのである。友人にささやかなプレゼントを贈ってもいいし、食料品店でお金が足りなくて困っている見知らぬ人を助けてもいいし、自分にとって重要な慈善団体に寄付してもかまわない。

 このお金を自分のために使いたいという衝動にかられるかもしれないが、過去10年間に行なわれたさまざまな研究によると、他人のためにお金を使ったほうが幸福感を得られる可能性が高い。事実、自分の必需品にも事欠くような人たちでさえ、他人のためにお金を使うことで「温かく輝いた表情」を見せる。

 ただし、他人のためにお金を使えば、いつでも誰でも幸せになれるわけではない。そうではなく、どのように、なぜそうするのかが重要だ。「他人のためにお金を使う」と、自主的に決断したと思えることが大切なのだ。それが自分の選択であることがポイントで、押しの強い同僚にまたしてもペット基金への寄付をさせられたと感じることとは違う。

 思い切ってお金を提供することで、自分にとって本当に大切な人や大義に違いをもたらすことが確認できるような機会を探すといい。加えて、少額から始めてもよい。数ドル使うだけでも気分が高まることが研究で示されている。

 ただし、この研究には限界があることに留意する必要がある。幸福感を高める支出の選択は、それぞれの性格にも左右される(ある実験では、79人の参加者がバーまたは書店で使える金券を受け取った。外交的な人は金券をどちらで使っても幸福感が少し上がったが、内向的な人はバーよりも書店に行った時のほうが断然高い幸福感を覚えた)。

 それでも、この小規模な研究は、支出と幸福感に関する研究の新たな章の始まりだといえる。ビッグデータと機械学習の進歩を活用して、大切なお金をどう使えば幸福感をより味わえるかについて、集団レベルのアドバイスを脱し、個人にパーソナライズしたアドバイスを提供する時代になりつつある。


HBR.org原文:Does More Money Really Make Us More Happy? September 14, 2020.