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多くのストレスを抱えて、感謝の気持ちを表す余裕などないと思っているかもしれない。だが、ポジティブな側面を見ずにネガティブな側面に囚われると、心身の健康はもちろん、仕事のパフォーマンスも低下し、挙句は職場で無礼な行動に出てしまうこともある。無礼な行為が組織に蔓延すれば、大きな代償を伴う大きな問題に発展しかねない。筆者らによれば、組織の不当な行為を減らすには、感謝を表すことが不可欠だという。マネジャー自身が感謝の文化を培うロールモデルとなり、実際にどのような取り組みができるのか、処方箋を提示する。


 このところ、感謝できることなどほとんどないと思うかもしれない。私たちの多くが、自分の健康や生計、仕事についてストレスを感じている。こうした心配事は、下向きの悪しきスパイラルをつくり出しかねない。そして、私たちの心身の健康に影響を与え、仕事のパフォーマンスを低下させ、職場の対人関係を緊張させる。

 ポジティブな側面を見失い、ネガティブな側面にばかり目を向けていると、同僚への態度も邪険になりがちだ。侮辱したり、陰口を叩いたり、無視したり、あるいは排除したりするかもしれない。

 こうした無礼な行動は、組織内に蔓延し、大きな代償を伴う問題だ。残念ながら、組織での不当な行為を減らす実際的な解決策を提示する研究はほとんどなく、数少ない解決策は往々にして費用と時間がかかるわりに、効果は限られている。

 職場での不当な行為について、研究者として20年の集合的経験を持つ我々としては、この問題を看過できなかった。そこで、こうした有害な行動を抑制する、効果的で科学的根拠のある方法を探すことにした。

 不当な行為とは、つまりは人を辱めることである。そこで我々は、ポジティブ心理学の研究に目を向けた。特に、感謝を用いて人を元気にする方法が示されているに違いないと考えたのである。実際に研究から、感謝の気持ちは対人関係を改善し支えられているという実感を高め向社会的行動を増やすことが明らかになっていた。

 またこの分野の研究では、簡単な介入によって意図的に感謝の気持ちを育めることもわかっていた。たとえば、「感謝のグループ」をつくり、参加者が感謝について話し合うセッションを設けたり、感謝について文章を書いたり、ロールプレイングで感謝を表現する練習をしたりするのである。

 あるいは、誰かに感謝の手紙を書き、その人の前で声に出して読むのもよい。最もシンプルでよく知られた介入はおそらく、感謝の日記をつけることだろう。毎日、数分間を使って、自分が感謝している事柄、人、出来事を書き出すのだ。

 このような研究結果から、感謝の介入は組織での無礼な行動を減らす可能性があると、我々は推論した。また、仮説が正しいかどうかを検証するだけでなく、もし効果があるとすれば、それがなぜなのかも理解したいと考えた。

 ポジティブ心理学の文献では、感謝の介入が効果を上げると考えられる説明として、以下の4つを挙げていた。

・感謝の介入は、向社会的な行動へのモチベーションを強化する
・感謝の介入は、親密な対人関係を促進する
・感謝の介入は、自制心を高める
・感謝の介入は、支えられている実感を高める