(4)いますぐ、会社を経営するために必要なスキルとリソースが本当にあるか

 組織心理学者で著述家のアダム・グラントは、次のように書いている。「フルタイムの仕事を辞めて、会社を始めるのは、最初のデートで結婚を申し込むようなものだ……最も長続きしている会社は、創業者が安全策を取るタイプであることが多い」

 25歳で15万ドルの学費ローンを抱えることになった私は、勢いで仕事を辞めるわけにはいかなかった。それに、自分のビジネスを興す前に、仕事の経験やスキル、ネットワーク、そして経済的な安定が必要だった。

 ムーンショットの成功例だけを取り上げることで、大きなリスクを取ることが美化されがちだが、最高の起業家とは、自分に合ったリスクと報酬の最適条件を見出すことができるものだ。

 ナイキの創業者フィル・ナイトは、会社を立ち上げてから最初の5年間、公認会計士(CPA)として週6日、PwCで働いていた。リアリティ番組『シャーク・タンク』に登場する投資家のデイモンド・ジョンは若い頃、レッドロブスターのウェイターなどいろいろな仕事をしながら、少しずつ自分のビジネスを構築していった。

 さまざまな仕事を経験すると、基本的なマネジメントスキルを身につける助けになるが、起業家としては、自分が本来得意なことや好きなことは何か、自分が苦手で誰かに助けてもらわなければいけないことは何かを知ることも重要だ。

 事業運営に必要なスキルをすべて持っている必要はないが、夢を実現するには、自分を補完するスキルを持っている人を見つけられなくてはいけない。

 同じように、私は幅広いピアメンターや地域のリーダー、チームメンバーから多くを学び、会社のポテンシャルを高めるうえで大きな助けとなった。

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 このように、私は安定した仕事を辞めて、情熱を注ぐプロジェクトを追いかける決断をする前に、さまざまなことを自問した。「個人的な事情も影響したか」「もちろん、イエス」。「コロナ禍で意思決定は早まったか」「100%、イエス」。「緊張したか」「間違いなく、イエス!」。だが、適切なタイミングで人生の新しいステージに乗り出せたことに興奮もしている。

 さて、あなたはどうだろうか。あなたが自分の好奇心を追求し、いつの日か情熱を注ぐプロジェクトを仕事にする時、私の経験が参考になれば幸いだ。


HBR.org原文:Should You Choose Your Passion Over a Paycheck? November 17, 2020.