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キャリア選択に悩んだ時、よく耳にするのが「情熱に従おう!」というアドバイスだ。しかし、組織行動学を専門とする筆者は、情熱に従って自分が好きなことを追求しても、キャリアの成功には必ずしもつながらないと指摘する。むしろ、うまくできなくても誰に言われたからでもなく、そうせずにはいられない何かが重要であり、それが自分の能力を磨き、やがてほかの人とは違う特性を育むことになるという。では、筆者が提唱するキャリアアドバイス「水ぶくれに従おう!」をひも解いていこう。


 かつてノースカロライナ州に住んでいた頃、私は家族とともに多くの時間をブーンやブローイング・ロックといった山間の町で過ごした。

 そこではどういうわけか、「楽しくないなら、なぜやるの?」とか「至福をもたらすものに従おう!」といったヒッピー風のバンパーステッカーのついた古いボルボをよく見かけた。どのようなものか想像がつくだろう。

 こうしたメッセージは、人生において「道筋を見失わない」ことが大事だと思い出させてくれる。私たちはつい、自分がやりたいことを忘れて、すべきだと思うことに忙殺されてしまう。その一方、こうしたメッセージは、人工甘味料のようにどこか甘すぎる感じもする。

 キャリアアドバイスに限って言えば、「情熱に従おう!」という言葉は「至福をもたらすものに従おう!」に少しばかり似ている。

 たしかに、自分の時間と労力をどこに注ぐのかを選ぶ際に、情熱に従うことは素晴らしいアドバイスであるような気がする。結局のところ、人は平均して人生の9万時間あまりを仕事に費やす。これは人生全体の3分の1の時間に当たる。それだけの時間を、自分が本当に好きなことのために使えるなら、実に素敵だろう。

 しかし同時に、「情熱に従おう!」というのは、アドバイスとしてはやや表面的すぎて、おそらく役に立たないだろう。むしろ、このアドバイスで傷つく人もいる。生まれながらにして持っている能力にぴったり合致し、心の底から沸き上がる喜びをもたらしてくれる夢の仕事は、誰にでも見つかるとは限らないからだ。もちろん、情熱が長続きしない可能性だってあるだろう。

 ロンドン・ビジネススクールの教授として組織行動学を専門とする私は、人々の職業選択とキャリアでの成功について25年にわたって研究を続け、論文を執筆してきた。そんな私からのバンパーステッカーになりうるキャリアアドバイスは、「情熱に従おう」や「至福をもたらすものに従おう」ではない。「水ぶくれに従おう」である。